「権力監視」公益訴訟の結果、舞い込んだ429万の請求書 【Ohmynews】2022,5,21  

5回目の訴訟費用督促状を受けた[参与連帯]… 法改正を通して公益訴訟敗訴費用の問題を改善すべきだ  

[参与連帯]は今、督促状を受けています。先週には5回目の督促状が来ました。怖気づいた担当者は「督促状在中」と書かれた郵便物を受取る度に胸がどきどきします。継続して納付を猶予する場合、支給命令と強制執行が行われて通帳が差押えられることもあるそうです。

 1ヶ月暮らすにもぎりぎりの月給で貯蓄したこともないのに、「月給が出なかったらどうしよう?」という気がします。詳しい内幕を知らない人々が見ると、[参与連帯]が法的手続きを拒否し、訴訟費用を出したくなくて対抗していると思われるかもしれないので、「二重基準」(訳注:『私がやれば恋愛、他の人がすると情事』を略して表す語)という言葉が出てくるのではないかとビクビクします。

 督促状が届く周期が早くなっています。5回目の督促状は4回目の督促状が来てから2週間で来ました。督促状を受ける度に話合いました。現実的な不安と、これから起こるかも知れない最も良くない未来まで考えてみます。今後、何回の督促状を更に受取るのか、私たちが支払わなければならない負担金に遅延利子がどれだけ付くのか、私たちがその費用に耐えられるのか苦悶しています。

 幾度かの議論の末、[参与連帯]は公益訴訟の敗訴費用制度が改善されるまで、納付を猶予することにしました。私たちが正しいと考える事のために、私たちの不安、金銭的負担に耐えることに決めました。

 担当者はドキドキする胸を掴み、督促状がまた来る前に、この問題をより多くの人に知らせます。短くは4年、長くは20~30年前から始まった長い話を聞いてください。

 お金のせいで公益訴訟ができないって?

 これは1990年の「民事訴訟法」改正から始まります。韓国も最初は多くの国家のように訴訟費用の各自負担が原則でしたが、1990年の「民事訴訟法」改正を通して「敗訴者負担主義」を導入しました。訴訟で敗れると、相手方の弁護士費用を含めた訴訟費用の全てを敗者が負担する形態です。

 しかし、医療訴訟のように情報への接近から平等でない訴訟や、大きな企業を相手にした集団訴訟、国家を相手にした訴訟、新たな法解釈を要する公益訴訟は、必然的に敗訴率が高くなるしかありません。

 敗訴すれば、相手側の弁護士受任料まで全部負担しなければならないので、金銭的余裕がなければ訴訟を躊躇するようになっているのが現実です。特に、公益訴訟の場合、勝訴した際には韓国社会に及ぼす公益性が大きく、訴訟乱発の懸念が少なくても敗訴費用が負担され、必要な訴訟までも提起できない場合が発生したりします。

 他の多くの国々では、公益訴訟の社会的寄与、意味を認めて、費用に対する例外を置いています。敗訴者負担主義を採用している英国とカナダは、裁判所が敗訴費用の負担を判断して、公益訴訟の場合には免除する場合が多いです。各自負担主義を採用する米国や日本も、公益訴訟や不当な訴えが認められる場合には、訴訟費用負担の主体を裁判所で決定する形態で金銭的負担から公益訴訟を保護します。

 公益訴訟が個々人の利害関係よりも多数、すなわち公共の利益のための訴訟だからです。 2020年、法務・検察改革委員会は法務部に、公益訴訟敗訴当事者の訴訟費用を必要的に減免する規定作りを勧告したりもしました。勿論、まだ何の変化もありません。

 国家は必ず敗訴費用を受取らなければならないか?

 現行の「民事訴訟法」は、勝訴した相手が大韓民国国家であっても、裁判所に訴訟費用の支払いを要求する訴訟費用確定請求を行い、裁判所は該当費用を機械的に適用して公益的目的の訴訟にまで訴訟費用を請求するようになっています。今回、[参与連帯]に敗訴費用を催促している勝訴した相手は、大韓民国の[人事革新処](訳注:首相直轄の行政機関)です。

 [参与連帯]は、公職者の利害衝突を防止するための、退職公職者の民間企業などの就業審査が正しく行われているかを知るために、2006年から毎年イシューレポートを発刊してきました。

 2018年には、公正取引委員会出身の退職幹部の不法就業に対する検察捜査を契機に、企業関連調査権と告発権を持った、公共機関の退職公職者の就業審査が正しく行われているかについての実態を把握するため、国税庁、公正取引委員会、金融委員会、金融監督院出身の退職者に対する、政府公職者倫理委員会の就業審査関連資料を情報公開請求しました。

 ところが[人事革新処]は、審査対象者の人的事項などデリケートな個人情報を含んでいるので公開するのが難しく(情報公開法第9条第1項第6号)、会議録と決定理由書は公職者倫理法施行令に従って政府公職者倫理委員会会議は非公開の対象であり(情報公開法第9条第1項第1号、公職者倫理法施行令第19条第5項)、公開する場合、外部の不当な影響などで公正な業務遂行を阻害する憂慮があるとして(情報公開法第9条第1項)、情報を非公開処分しました。

 [参与連帯]は、個人情報は非識別化すれば良く、就職の経緯や就職承認申請事由はデリケートな情報と捉えることができず、会議非公開と議事録非公開は異なるし、情報公開を通した透明性強化で、審査委員たちの責任感を高めることができると異議を申請しましたが、却下されました。

 この資料を必ず確認しなければなりませんでした。就職制限審査を受けた退職公職者の93%が就職可能(許容)決定を受け([参与連帯]2018年イシューレポート)、業務関連性があるように見えますが、就職可能決定が下された事例が多数確認される([参与連帯]2017年イシューレポート)等、不良審査の疑惑があったからです。

 就職審査結果に対する公正性の確保と国民の信頼向上のためにも、市民が審査過程を監視・批判して改善を要求できるように該当情報は公開されなければならないため、ソウル行政裁判所に情報公開処分取消し請求行政訴訟を提起しました。第1審では大部分の情報を非公開にし、たった2つの情報だけを公開しろという一部勝訴判決を受け、控訴審では棄却されました。

 大きな力を持っていた公職者が、退職後に利害関係のある企業で一定期間働けないように制限する制度がきちんと運営されているかを知るために始めた事でした。市民団体の本分である権力監視と国民の知る権利を実現するため、国家を相手にした4年間の公益訴訟の結果で戻ってきたのは429万5577ウォンの請求書でした。

 公益訴訟敗訴費用、納付拒否ではなく猶予

 公益訴訟を通して韓国社会はより良い社会に変わってきました。既存の主流的判例で認めていない新しい法解釈を引出すことで、社会矛盾、人権改善などを促進する役割を果たし、その過程で世論を形成して国民参加を触発しました。

 金浦空港周辺住民による国家相手の騒音被害に対する集団訴訟や、ソウル広場の車壁(訳注:警察車両(バス)で作られた「遮断壁」)違憲決定、移動通信会社に対する通信資料提供内訳情報公開請求及び損害賠償請求、青瓦台(訳注:大統領府)の100m前まで行進が可能になった事など、すべて公益訴訟を通して成し遂げられました。

 [参与連帯]が敗訴した情報公開訴訟もやはり公益訴訟です。行政の透明性と責任性を問う情報公開請求制度の根拠法である「情報公開法」は、国民の知る権利保護の次元で国民の誰もが情報公開請求を行い、非公開処分に対して行政訴訟を提起できるようになっています。

 ところが、一律的に過度な訴訟目的の値を適用し、敗訴時に訴訟費用を負担させて国民の裁判請求権を大きく制約して、これを通した行政監視などの公益訴訟を萎縮させています。

 2021年2月に、[参与連帯]と[民主社会のための弁護士会]公益人権弁論センター、[進歩ネットワークセンター]、[全国言論労働組合]、[カトリック人権委員会]、[透明社会のための情報公開センター]は、このような意見を込めて憲法訴願を提起しましたが、却下されまました。法解釈の問題ではないというのが憲法裁判所の判断でした。

 今や、「民事訴訟法」や「情報公開法」の改正を通して、公益訴訟敗訴費用の問題を改善しなければなりません。[参与連帯]はこの問題を知らせ、法改正に力を集めるために、情報公開請求公益訴訟の敗訴費用納付を、法が改正されるまで猶予することにしました。

 現在、[参与連帯]が訴訟費用納付を猶予している公益訴訟は2つです。先に紹介した2018年[人事革新処]に行った就職審査関連情報公開請求訴訟と、2019年、国防部に行ったTHAADミサイル(訳注:終末高高度防衛ミサイル)関連の情報公開訴訟です。

 [参与連帯]は2019年10月、国防部の敗訴費用680万ウォン余りの納付通知に対して、公益訴訟費用関連の制度改善がなされるまで、訴訟費用納付を猶予するという立場を明らかにして、法務部に制度改善意見書を提出しました。その後、第21代国会議員と数回にわたって討論会を行い、方法を模索しています。大韓弁護士協会でも積極的にこの問題の改善策を模索しています。

 1月には[人事革新処]にも公益訴訟費用関連の制度改善がなされるまで訴訟費用納付を猶予するという立場を伝達し、法務部に制度改善意見書を提出しました。しかし、[人事革新処]は、納付猶予は法務部所管だとして、すでに5回目の督促状を送ってきました。

 国防部は督促していないのに、督促状を送り続ける[人事革新処]だけを問題視しているわけではありません。みんな自分の役割に忠実な仕事をしています。 [参与連帯]も市民団体の本分に忠実に、公益訴訟敗訴費用の問題を世の中に知らせ、解決策を探っていきます。 この問題を一緒に考えてみてください。(ムン・ウノク記者)■  

原文URL → http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0002835984&PAGE_CD=ET001&BLCK_NO=1&CMPT_CD=T0016