韓米相互防衛条約第4条の「権利」が執行されたSOFA、SMAの問題点 【統一ニュース】2022,6,16 

[連載] コ・スンウ(言論社会学博士)の「米国の韓半島介入151年」(28)

 韓米駐屯軍地位協定(SOFA)は、韓国が施設と敷地を無償で米国に提供し、米国は駐韓米軍の維持に伴うすべての経費を負担するよう規定しているが、韓米両国は1991年に防衛費分担特別協定(SMA)を作り、米国が負担しなければならない駐韓米軍維持費用の一部を韓国が負担するようにしてきた。防衛費分担金は、駐韓米軍駐留費用の中で韓国が分担する分であり、駐韓米軍に勤める韓国人労働者の人件費、各種米軍基地内の建設費用、軍需支援費などの名目で使われる。

 SMAの第6、7条は、韓米両国が問題を協議しながら書面合意に改正、修正できるようになっており、米国にとても有利になっている。これに伴って、駐韓米軍の防衛費分担も天文学的な金額で韓国が負担している。ドナルド・トランプ大統領が『韓国が駐韓米軍の防衛費を更に5倍負担しなければならない』と語ったのも、まさに韓米相互防衛条約に基づいたSMAに言及したと推定され、このような特恵の源泉となっている韓米相互防衛条約を現在のように放置してはならない。SOFA、SMAのほか、韓米連合土地管理計画(LPP)、共同環境評価手続き(JEAP)などが不平等だという批判を受ける原因も、同条約4条のためだと推定される。

 米軍、SOFAを結んだ後、使用基地の汚染問題に責任を負ったことはない

 韓国と米国は、1966年に環境関連の規定が皆無のSOFAを結んだ後、これまで明確な環境汚染の浄化基準を設けておらず、米軍は一度も基地内の汚染に対する責任を認めて治癒に乗り出したことがない。(【水原市民新聞】2017.7.17) SOFAの了解覚書である環境条項には「駐韓米軍は大韓民国政府の環境法令および基準を尊重する」とだけあり、駐韓米軍に汚染問題解決を強制できない状況だ。(【JTBC】2017.7.11)

 米軍部隊で発生した汚染の事例を見ると、韓米間の不平等な現実がそのまま表れている。 ソウル地下鉄碌莎坪(ノクサピョン)駅周辺の汚染が近くの龍山米軍基地から流出したとして、裁判所が2007年に18億ウォンの賠償判決を下した時、その賠償金18億ウォン余りは、韓米相互防衛条約による特別法に従って米国ではなく韓国政府がソウル市に支給した。(【JTBC】2014.1.18) 国民の血税が米軍基地の汚染除去などに支出されたのだ。

 また、韓米両国が2009年に合意した「共同環境評価手続き」によると、韓国政府は返還米軍基地の環境調査期間を20~150日に限定し、米軍の合意なしに関連情報を公開することはできない。この手続きのため、韓国政府は一部の米軍基地で確認された環境問題に対して米軍が合意してくれなかったので公開できなかった。これは主権国家である韓国が、米軍基地として使われた敷地の環境汚染、その原状回復問題に対して適当な主権を行使できず、国民に深刻な不名誉と被害を甘受させている。

 龍山米軍基地敷地の75%が、113年ぶりに2017年、ソウル市民のもとに戻ることになったが、この基地の環境汚染問題が深刻だ。韓国外交部は2019年12月、ソウル龍山米軍基地の一部を含めた返還される12の駐韓米軍基地の環境汚染責任問題について、米国が汚染浄化の義務がないという主張に固守すると、環境治癒費用協議が円満に行われない場合には米国に訴訟を提起できると明らかにした。外交部は、韓米両国が12ヵ所の基地返還に合意したと明らかにしながら、環境治癒費用を先に補填した後、米国側に責任を負わせると明らかにした。(【韓国日報】2020.12.18)

 米国がソウル地下鉄碌莎坪駅周辺の汚染費用を拒否した事例から、駐韓米軍が敷地として使用した後に発生した、龍山基地などの環境汚染に対する責任を負わない場合、浄化費用をそのまま国民の税金で充当する可能性が高い。龍山基地の汚染状態に対する正確な点検は行われなかったが、約1兆ウォン前後がかかるものと推定されている。では、米軍が新たに移転する、単一の米軍基地としては世界最大という平沢米軍基地の環境汚染問題はどうなるのか。現在の韓米同盟関係が改善されなければ、龍山米軍基地の場合と同一と推定される。

 韓国、米軍に対する防衛費分担金を5年間50%引き上げることになり

 外交部が昨年、第11回SMAの交渉結果を明らかにして物議を醸し出した。それによると、韓国は防衛費分担金として2021年に10億4500万ドル(1兆1833億ウォン、13.9%引き上げ)を与え、今後、国防予算の引上げ率を自動的に適用して5年後には50%を引き上げることにして、今後6年間で70億ドル(7兆9000億ウォン)を負担することになるという。ところが驚くべきことは、防衛費分担金の中で米国が使わずに残したお金は2020年現在、1兆ウォン近く現金で米国の銀行に入っていると分かっている。(【統一ニュース】2021.3.11)

 【6.15南側委員会】は、『SOFAに従って駐留費を米国側が全額負担しなければならないにも関わらず、防衛費分担特別協定を結んでいることが問題』として、『今日の駐韓米軍の活動範囲は対中国圧迫で日増しに拡大しており、THAAD(ミサイル)配置をはじめとする駐韓米軍の対中国圧迫政策に伴う中国の反発がそのまま韓国に戻ってきている。 対北敵対、対中圧迫の発進基地として韓半島を使用するという米国の政策に、なぜ韓国が呼応して国民の血税を捧げなければならないのか』と叱咤した。

 [ケーススタディー1] 龍山米軍基地の環境汚染問題で確認された韓米不平等関係

 最近、公園として開放することをめぐって物議を醸し出している龍山米軍基地の汚染問題が深刻だが、汚染させた当事者である米国の存在は見えない。天文学的な費用がかかるというが、米国は知らぬふりをしており、結局、国民の血税で負担しなければならないという憂鬱な話だけが出ている。駐韓米軍の環境汚染問題は、韓米相互防衛条約第4条の付属協定であるSOFAによって米軍に提供される土地と施設で発生したものだが、この第4条の「権利」が駐韓米軍の環境汚染に免罪符を与える形で作動していると見なければならない。

 汚染が深刻だと指摘され、公園用として不適切だという憂慮が提起される龍山米軍基地とCamp Red Cloud基地は、その面積が16万5000㎡で、2021年に米国が返した基地の敷地5万㎡と合わせれば、全体龍山地域の返還敷地(203万㎡)の10%余りに該当する。龍山米軍基地で発癌物質であるベンゼンが基準値の510倍以上検出されるなど、有害物質浄化が急がれ、それに対する莫大な費用がかかるが、これに対する浄化責任と関連して双方は合意に至らなかった。

 今回の龍山米軍基地返還措置で、返還対象の米軍基地80ヵ所の内69ヵ所の基地が返還され、龍山基地の残りの区域を含めて11ヵ所の基地が残っている状況だ。現在まで国防部で浄化完了した基地は17の基地で、浄化費用として約2156億5000万ウォンがかかった。1)

 SOFA第4条1項「米国は敷地汚染に対する義務がない」

 龍山米軍基地は公園として造成される予定だが、浄化事業なしに公園を作れば、そこを訪問する人々が被害を受け、汚染物質などが地下水に乗って周辺地域まで広がる危険があると指摘されている。龍山基地全体の汚染を浄化するだけで、数兆ウォン程度は当然かかるだろうという見方も出ている。2)

 SOFA第4条1項は、米政府が米基地施設と敷地を返還する際、元の状態に復元したり、復元費用を賠償する義務を負わないと規定している。韓米SOFA第4条1項の内容は以下の通り。3)

 — 合衆国政府は、本協定の終了時やそれ以前に大韓民国政府に施設と区域を返還する際に、これらの施設と区域が合衆国軍隊に提供された当時の状態で、同施設と区域を原状回復しなければならない義務を負わず、またこのような原状回復の代わりに大韓民国政府に補償しなければならない義務も負わない。—

 同条項が議論になると、米国は2001年1月、「健康に急迫し、実質的な危険性(KISE)に該当する汚染は、米国側が浄化費用を負担しなければならない」という立場を「SOFA環境保護に関する特別了解覚書」に、以下のように盛り込んだ。4)

 –アメリカ合衆国政府は、駐韓米軍活動の環境的側面を調査・確認して評価する周期的環境履行実績評価を遂行する政策を確認し、これは環境への悪影響を最小限に抑え、計画・プログラムを用意してこれによって所要される予算を確保し、駐韓米軍によって引き起こされる、人間の健康に対する公知の急迫かつ実質的な危険をもたらす汚染の治癒を迅速に行い、そして人間の健康を保護するために必要な追加的治癒措置を検討するためのものだ。—

 KISEは、「SOFA環境保護に関する特別了解覚書」で、米国が責任を負う環境汚染の内容を表現した英文表現から該当文字の最初のアルファベットを集めたものだ。その表記は、“the Government of the United States confirms its policy … to promptly undertake to remedy contamination caused by United States Armed Forces in Korea that poses a known, imminent and substantial endangerment (KISE) to human health.”だ。これは、米国は米軍基地で発生した環境汚染の中で、「すでに公知で、緊迫しつつ、実質的な危険で人間の健康を害する事項」に対することのみ責任を負うと言うことだ。

 SOFA了解覚書の中でKISEが適用された事例は皆無

 「SOFA環境保護に関する特別了解覚書」3項で、米国は韓国の環境法規を尊重(respect)するということで、それを遵守するということとは距離がある。5)  米軍は駐韓米軍の将兵の中でKISEによって健康に問題が生じた事例がないという点を盾にとり、このため韓国内のどの米軍基地もKISEが適用されなかった。

 その結果、2001年以後KISEと認定された事例は皆無で、米国が駐韓米軍基地の汚染に対しては一銭も負担したことがない。米軍が提示したKISEに該当する環境汚染がないという理由だった。これは米国がKISEに該当するか否かを判定する調査方法を非合理的なものと固執したためだった。

 KISEは、米国の環境責任と環境浄化措置に係る連邦法「総合環境対応賠償責任法(CERCLA)」と類似した内容である。6)  CERCLAは潜在的な環境汚染責任当事者の範囲を定めて厳格責任、連帯責任、遡及責任を課し、賠償資力の確保を強制しているということだが、米国は韓国での米軍基地汚染問題を韓国の法ではなく米国の法によって処理するという発想から対等な国家間の態度ではない。米国は韓米相互防衛条約第4条の権利を執行する過程の延長線上で、駐韓米軍基地の汚染問題にも対処しているのだ。

 環境部は駐韓米軍基地の汚染問題に対して韓国の環境法を適用しなければならないという立場だが、米国はKISEに固執しながら、事ある毎にまともな調査さえなされていない。 例えば、2004~2007年のSOFA合同委員会は41の駐韓米軍基地について調査したが、個々の基地毎に調査期間は105日に制限され、基地を訪問して現地調査できる期間は6日に過ぎなかった。

 実際、米軍側は基地調査や協議に非協力的だった。基地汚染を調査する韓国企業は、記録審査のための30日間の期限まで基地に対する全体環境資料の提供を受けられなかった。 現地調査期限を延長しようという韓国側の要求は、米軍が受け入れなかった。このような悪条件にもかかわらず、韓国側の調査では、米軍が返還した23の米軍基地の中で22の発癌性物質が危険水位で韓国の安全基準を超過した状態だった。

 龍山基地の場合、米軍はその返還を前にして同基地の汚染有無について調査しようという韓国政府やソウル市の要求を拒否し、2015年に許可したが、韓国政府はその内容を公開せず、これに対して韓国の市民団体が訴訟を提起した。環境部は、外交事案なので不可能だと拒否したが、裁判所が市民団体の肩を持つと、控訴するやり方で持ちこたえた。7)

 駐韓米軍による環境汚染問題に関して、市民団体などの自国民に対する政府の態度は、国民を主権者として仕える政府の態度とは見難いが、これはTHAAD(高高度ミサイル防御体系)でも同じだと言える。慶尚北道星州(ソンヂュ)市で、THAAD基地に配置された米軍のために税金を納める国民と警察が日常的に衝突する事態が放置されていることは、国の恥として海外から後ろ指を差されるのではないかと心配だ。

 【ケーススタディー2】 駐韓米軍防衛費分担金、韓国が与える現実

 韓米両国が2021年4月の第11回韓米防衛費分担金特別協定(SMA)で、前年比13.9%増の1兆1833億ウォンとして、以降の4年間、毎年の国防費増加率に連動して分担金を引き上げることで合意した。このことで以降5年間、毎年1兆ウォンを超える資金を米国側に渡すことになり、協定最終年の2025年には韓国側分担金の総額が1兆4896億ウォンに跳ね上がる可能性がある。8)

 ところが、新しい協定とは別に、すでに先の協定に従って支給した分担金の内、1兆ウォンに達する金がそのまま残っている。国防部が【共に民主党】のソン・ヨンギル議員室に提出した資料によると、第10次SMAが満了した2019年12月31日を基準に、韓米防衛費分担金の未執行現物支援分は9989億ウォンに達する。これは2020年に韓国が出す1年分の防衛費分担金1兆389億ウォンの約95%水準だ。防衛費分担金制度の根本的な改善が必要だという指摘が出ている。

 該当年度に予算をすべて使い果たせなかった韓米防衛費分担金不用額の場合には、「未執行」という名目で期限なしにお金が積もっていく構造だ。これは政府の予算の場合、適法な手続きを経て繰り越された金額だけを翌年に使えるようにした原則とは異なる。米軍が不用額をどのように使うかについて韓国は介入できず、米国が使用計画などを韓国政府に明らかにしたとしても、米国の同意なしに公開が不可能になっている。9)  駐韓米軍と関連した韓米合意は、米国の同意なしに韓国政府が一方的に発表することができなくなっているからだ。

 韓米防衛費分担金不容認額1兆ウォン放置-4条「権利」が是正を阻止

 国民の税金で充当される国家間取引なのに、金を与える側から合理的な権限を行使できなくなっているのは、米軍に国民の税金を与えるという批判を招く部分だ。国際社会が嘲笑するこのような不合理な実態が放置されるのは、韓米相互防衛条約第4条の「権利」を保障するための、子供でも嘲笑する不合理な計算方式のためだと言える。未執行金が天文学的な金額に積み上げられているにも関わらず、韓米両国が最小限の常識であれば是正できるはずなのに、そうできないのは4条の「権利」規定がどれほど酷く排他的な法的装置なのかを反証する。

 これと関連して【平和と統一を開く人々(平統サ)】は2021年4月8日に記者会見を開き、『ほぼ毎年未執行の分担金が発生しているが、米側がこれに対する支給を公式に要請したこともなく、韓国政府がこのための予算編成手続きをきちんと踏んだこともない』と指摘した。10)

 【共に民主党】のソン・ヨンギル、【民主平和党】のチョン・ヂョンベ、【正義党】のキム・ヂョンデ議員も2019年3月に国会で記者会見を開き、『駐韓米軍が莫大な予算を使いながらも、一度の感謝もしない現実を正さなければならない』として、『1991年度に第1次協定を行った後、今までに合わせて16兆2767億ウォンの防衛費分担金を支給したが、一度も監査院の監査ができなかった。国民の税金を16兆以上提供しながら監査院の監査ができない組職があり得るのか。毎年少なくとも数十億ウォンの余剰金が発生しても監視・監督もできず、国庫に還収しなければならないのに何の条項もない。電気料金とガス料金、上下水道料金、洗濯・入浴・廃棄物処理の用役に対する支援まで明示しているが、このようなお金まで私たちがすべて払わなければならないのか』と主張した。11)

 ソン・ヨンギル議員はまた、『国防部が自身に提出した資料によると、駐韓米軍では2013年に59億8700万ウォン、2014年に86億4500万ウォン、2015年に108億7200万ウォン、2016年に56億5800万ウォン、2017年に144億5900万ウォンなど、2012年以後の最近5年間、毎年50億~100億ウォン以上の不用額が発生した』と明らかにした。

 韓米防衛費分担金協定は外国との協定なので発効するには国会の批准が必要だが、国会がまともな検証をしたことがないということは韓米間の不平等な、米国に深刻に傾いた軍事同盟関係の実状を表わす一つの事例に過ぎない。■

1)【edaily】2022.2.25.

2)【YTN】 2022. 4. 13.

3) https://www.korea.kr/archive/expDocView.do?docId=28802

4) https://www.korea.kr/archive/expDocView.do?docId=28802

5) https://www.usfk.mil/Portals/105/Documents/SOFA/A08_Amendments.to.Agreed.Minutes.pdf
However, in the agreed minutes amended to the SOFA in 2001, the United States “confirms its policy to respect relevant Republic of Korea Government environmental laws, regulations, and standards.”

6) https://en.wikipedia.org/wiki/Superfund#Procedures

7)【Korea Times.】 2016. 7. 17.

8)【中央日報】2021.4.8.

9)【中央日報】2019.3.15.

10)【中央日報】2021.4.8.

11)【中央日報】2019.3.15.

原文出所URL → http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=205317