topic-11 遠くて遠い龍山(ヨンサン)公園① “6月公園造成は汚染浄化しないということ” 【Newsトマト】2022,3,30
龍山米軍基地でのベンゼン汚染地下水は依然として漏出
“基地返還前の汚染敷地浄化は必須”
専門家らは“どこがどれほど汚染されているのか知り得ない”
“3ヶ月以内に龍山公園の造成は、まったく理屈に合わない”
[Newsトマト:ユン・ミニョン記者]
龍山米軍基地返還の移転協定が締結されたのは18年前だ。2008年の移転完了が当初の計画だったが、度ごとに霧散した。2019年になって10%余りが返還されたのみだ。基地敷地の汚染復旧に対する責任は依然として弥縫策だ。はっきりしない不安な平穏状態が続けられた。
そんなところに、尹錫悦(ユン・ソンヨル)第20代大統領当選者が、就任前に龍山国防部敷地へ執務室を移すと発表した。この空間には米軍龍山基地が含まれている。しかし、米軍基地が取り除かれた跡には、龍山公園がまず造られなければならない。龍山公園の造成どころか、米軍基地の移転だけで7年以上かかるというのが環境専門家らの指摘だ。尹大統領当選者が龍山の現実をあまりにも知らなすぎるという批判が出てきている。(編集部注)
次期政権が、龍山米軍基地を来る6月に市民公園として直ちに開放すると明らかにした事に、環境汚染問題に背を向けているという批判が出てきている。大統領執務室の移転計画も拙速という指摘が出ている状況で、龍山公園の造成計画も無理に早めて環境問題などで取り返しがつかない事態が招来するという憂慮だ。
29日、環境団体と専門家、龍山区民などによれば、公園造成以前に重要なことは、発癌物質を含む油類浄化作業が優先だと口を揃えた。しかし、次期政権と住民間の意思疎通が通じないとの理由で、「環境汚染の浄化をまったく行わない」ということだと捉えている。
韓国と米国が汚染の浄化作業責任をめぐって基地返還を長い間先延ばししてきたが、中途半端な公園造成によって米国の要求をすべて受け入れるようになる可能性が出てきて、「屈辱的外交」だとの批判も相次いでいる。
“流出する地下水に癌を誘発するベンゼンを検出”
龍山公園を造成しようとすれば、返還される米軍基地に対する土壌汚染の調査と浄化作業が必要だ。送油管と油類タンクが地中深く埋められている上に、施設の老朽化によって管から漏れ出た油が依然として近隣の地下水に流れ出ているためだ。
現在、龍山米軍基地内の汚染度は、基地返還以前には大韓民国が確認する方法がない。しかし、内部の汚染度が予想を超えて深刻だろうとの推察は可能だ。返還予定基地の流出地下水の汚染度から見ても、Campキム内部の汚染度を超えているからだ。
ソウル市と龍山区は2008年から油に汚染された地下水を浄化しているが、2020年基準で米軍基地周辺の地下水からは猛毒物質のベンゼンが基準値の1423倍も超過検出された。ベンゼンは世界保健機構(WHO)傘下の国際癌研究所が指定した第1群発癌物質で、長期間露出される場合は白血病・癌などを誘発する。
油汚染の程度を表す指標のTPH濃度は、2008年基準値の6578倍から2020年に511倍へ下がったが、まだまだ先は遠い。TPHも長期間の露出時に人体に各種の障害を誘発すると分かっている。龍山米軍基地では1990年を起点に、それ以前には暖房油・灯油・軽油を使用し、それ以後は航空燃料のJP8を利用した。
先立って2020年12月に返還された米軍基地の一部である「Campキム」の場合は、当時の環境部の調査結果で基準値に対するベンゼンは3.4倍、TPHは33.9倍が超過検出された。国防部が1年以上浄化作業を行ったが、依然として基準値を超えると判明した。当時、専門家らは米軍基地の浄化事業に5~10年が必要だろうとの展望を打ち出していた。
“6月公園造成は浄化しないということ”
龍山公園の造成所管機関の国土交通部は先立つ去年の12月、「龍山公園整備区域総合基本計画変更計画」を告示し、基地返還時点から公園の開園に7年を必要とする方向で計画を立てた。しかし、環境団体はこの期間も最小限の時間だとみている。返還と汚染も算出が終わり、浄化作業のみに必要とするにも不十分だという説明だ。
[緑色連合]の関係者は、『今は返還前であるので、実際にどこがどれ程汚染されているのかの情報を算出することができない』、『汚染された地下水の汚染度だけを見ても深刻なのに、国土部の7年という計画も非常に保守的な期間で、未だ返還もされていない場所を3ヶ月内に造成するというのは、浄化作業を行わないというのと同じだ』と指摘した。
続けて、『返還後に環境汚染の問題が浮上すれば、政府が拙速推進を否認しようと米軍には責任が無いと説明することもできる』として、『米軍が望む条件をすべて受け入れてやり、費用も天文学的に出して汚染問題も全部為し得るという態度なのか、理解できない』と付け加えた。
“「healing:癒し」の空間ではなく「killing:殺害」の空間になる”
区民らは‘選んでやったのに背信’という反応を見せている。尹当選者は大統領選挙で、江南(カンナム)3区に次いで龍山の得票率(56.44%)がソウルで4番目に高かった。しかし、いざ当選した後に住民の生活と直結する問題に関する憂慮を解消する窓口が無いと訴える雰囲気だ。
整備事業が推進中の漢江路1街特別計画区域近隣の公認仲介士関係者は、『龍山公園の造成自体に反対する住民らは多くないが、せっかく選んでやったのに住民の意見を無視していると怒る人が多い』、『龍山区民の私も、公園が癒し(healing)の空間にならなければならないのに殺害(killing)の空間になればどうしようもないという感情が先立つ』と語った。
キム・ウニ龍山市民会議代表は、『尹当選者は返還手続きと環境浄化、公園造成などの手続きに対する理解度がまったく無い』、『綺麗に浄化しなければ安全に利用することができないのに、土地だけ返してもらおうとすれば汚染が更に広がり得る危険があり実現不可能だ』と指摘した。(ユン・ミニョン記者)■