反米は親北で国家保安法違反なのか?【メディアToday】2023,8,6
[韓米関係の探求(35)]

公安当局、「親北反米」用語を通用させて反米不許可の固定観念を流布

 国家情報院などの公安当局はよく、国家保安法撤廃・駐韓米軍撤収などを主張する事は、北韓(訳注:朝鮮民主主義人民共和国)の連邦制統一方案主張と似ているとして‘親北反米’という用語を使う場合が多い。親北反米がコインの両面であるかのようにセットで通用させ、韓国社会で反米は許されないという固定観念を流布させている。

 国家保安法を掲げる国家情報院などの公安当局は、駐韓米軍に対する批判や撤収の主張は、結果的に北韓を利するという単純論理を適用し、思想と表現の自由を抑圧してきた。韓国でスーパー級の地位を保障される駐韓米軍に対する正当な問題提起さえ、国家保安法で処罰した事例が多く、国内政党、言論、学界などが沈黙する慣行が固まっている深刻な状況だ。

 過去の国家保安法違反事件の場合、日記帳、飲み屋での対話、所持した印刷物が有罪を立証する決定的証拠として悪用され、甚だしくは拷問による自白も法的証拠として採択されて偽スパイ事件が相次いだ。南北問題や韓半島(訳注:朝鮮半島)関連の事案について北韓、米国を取り上げる場合、国家保安法という眼鏡をかけた公安当局の注視を受けることになる。

 公安当局が、親北反米事件に対して国家保安法違反の嫌疑で捜査、起訴する場合、たとえ裁判を通じて有無罪が明らかになったとしても、少なくとも数年は掛かることになる。いったん国家保安法違反で訴えられれば、莫大な精神的、社会的衝撃に悩まされなければならない。裁判所の判決もどこまでが思想の自由なのか、明白な危険性があるのか、利敵同調なのかを問い詰めて有無罪が分かれることになるが、その基準が混乱している。

 親北反米事件に対する判決、有無罪の根拠が事案ごとに異なる

 国家保安法は、北韓を反国家団体と規定しており、北韓地域と住民全体が国家保安法の適用対象だ。南韓(訳注:大韓民国)住民が当局の許可を得ていない訪北、北韓住民と接触した場合、特殊潜入・脱出、会合・通信などの嫌疑が適用され、北韓の主張と似ている場合は称賛・鼓舞の嫌疑で起訴されて有罪判決を避けられない。政府が思想と表現の自由を統制し、社会全体にくつわを嵌めるような不幸な結果と共に、不通の壁が高まっている。

 所謂、「新北反米事件」に対する裁判所判決の場合、有無罪が明らかになる根拠が事案ごとに異なる。‘ゴムひも’国家保安法という皮肉が出てくる理由だ。ここ数年間で下された裁判所の親北反米事件に対する判決を紹介すれば、以下の通りだ。

 ①議政府地方裁判所刑事4部は、国家保安法違反(称賛・鼓舞など)の嫌疑で起訴されたA氏(57)に対する控訴審で、自主統一主張、反米扇動、天安艦沈没不正など一部の掲示文に対しては無罪と判断し、懲役1年を宣告した原審を破棄して懲役9ヵ月、執行猶予2年を言い渡した(【聯合ニュース】2018年12月19日)。

 検察は、A氏が特定インターネットサイトに、韓国政府を批判しながら“米国の植民地だ”として駐韓米軍の撤退をはじめとした反米闘争を扇動するなど、北韓の主張に同調して北韓の軍事力を称える内容の利敵表現物51件を掲載した嫌疑で起訴した。

 しかし、控訴審の裁判所はこのような内容が盛り込まれた12件に対して、『北韓の政策に追従・賛揚する内容に直接言及しなかった』として、『国家の存立・安全と自由民主的基本秩序を脅かす内容とは見られない』と無罪を宣告した。

 続いて控訴審の裁判所は、『被告人が長期間繰り返し北韓の理念を賛美・同調する内容の文章を掲載し、情報通信倫理委員会が遮断した北韓サイトに迂回接続して情報に接した後に文章を書いた』として、『但し、被告人がインターネットに文章を掲示しただけで、具体的かつ現実的な行動に進まなかった点、利敵団体に加入して活動した内容が確認されなかった点などを考慮した』と量刑理由を説明した。

 ②最高裁判所2部は、反米集会を主導した嫌疑などで起訴されたハン某氏に、『国家保安法上の特殊潜入・脱出、会合・通信などの疑惑を全て無罪と判断し、称賛・鼓舞の疑惑だけを有罪と認めた原審には法理を誤解した誤りはない』として、懲役1年6月執行猶予3年を言い渡した原審を確定した(【聯合ニュース】2014年9月29日)。

 1・2審は、ハン代表が北韓などで工作員と接触して指令を受領したという証拠が不足していると見て、国内で集会を主導した疑惑などに限って有罪と判断した。最高裁もこのような判断を維持した。

 裁判所は『ハン氏は親米勢力を追い出し、その代わりに自主的民主政府という美名の下で親北・容共政権を樹立した後、これを北韓政権と結合しようとする北韓の連邦制統一方案と同じ主張をしている』として、『ハン氏の行為は、このような目的を達成するための積極的な闘争の一環でなされた行為だと判断した原審は正当だ』と判示した。

 ハン氏は2004~2006年、中国の北京と瀋陽、北韓の開城で北韓統一宣伝部所属の工作員たちに会い、指令を受けて帰国した後に反米集会を主導した疑いなどで、2010年8月拘束起訴された。

 ③ソウル西部地裁は、国家保安法違反の嫌疑で拘束起訴されたファン某容疑者(61)に対して、『単純に北韓の政治・経済などの社会全般に対して、直・間接的な経験または学問的分析を通じた意見を開陳したり、反米自主、韓米同盟撤廃、駐韓米軍撤収、連合・連邦制統一などに関して議論することは、思想の自由が保障された大韓民国で自由な討論の対象になりうる』として、無罪を言い渡した(【ヘラルド経済】2016年11月14日)。

 ④ソウル中央地裁は、国家保安法上の称賛・鼓舞などの嫌疑で起訴された李某氏(43)に対して、韓米連合キーリゾルブ・フォールイーグル演習中断を促す集会などの一連の反米集会参加に対しては『国家の存立・安全に実質的な害悪を及ぼす明白な危険性が認められない』として、これに関する国家保安法違反の容疑を認めなかった(【世界日報】2014年1月27日)。

 裁判所は『キーリゾルブ訓練中断、対北制裁中断などが主張された集会』だが、『当時の社会的背景、参加者の多様性から見て、北韓の対南宣伝活動に対して無批判的に同調した集会とは断定し難い』と無罪の宣告理由を明らかにした。

 ⑤ソウル中央地裁刑事控訴5部は、汎民連韓国本部幹部の金某氏に対する控訴審で、『汎民連韓国本部が、韓米軍事訓練反対集会の日程と形式、闘争方式をホームページに具体的に公示し、汎民連幹部の金氏も司会をしながら集会を主催した』として、『単純参加ではなく司会者として集会内容に積極的に呼応したため、国家保安法上の利敵同調を有罪と見做さなければならない』と判断した。裁判所は、金氏がデモに参加しただけでは処罰できないとした原審を破棄し、金氏に国家保安法7条違反の嫌疑を適用して有罪を言い渡した(【アジア経済】2014年9月27日)。

 国家保安法下の朝鮮半島軍事危機事態に対する分析、どうする?

 現在の朝鮮半島の軍事的危機状況や、韓米、朝米関係などをどう分析するかということは、マスメディアの報道や専門家たちが出すメッセージで、その枠組みと内容が提示される。韓米と北韓が互いに相手を刺激するような軍事行動や武力示威について、どのような枠組みと内容で分析、展望するのが正解か?

 朝鮮半島の状況は南北分断から始まったという点、北韓政権は国家保安法によって崩壊させなければならない反国家団体という点で、国内マスメディアの報道、専門家の論評などはその範囲が制限的だ。国家保安法を意識する限り、北韓は主敵という観点から現在の朝鮮半島軍事状況を説明し、展望するしかない。それは客観的というより、北韓壊滅という目標の達成に寄与する範囲を越えることは難しい。

 国家保安法の条項の中で問題が多かったと指摘されていた一部条項が、違憲審判対象になって憲法裁判所で審議中だが、現在の状況に対しては、すべての国民が国家保安法を意識する自己検閲の過程を抜け出すことは難しい。憲法裁判所が憲法に違反しているかどうかを審判する対象は、国家保安法第2条第1項の反国家団体条項、第7条利敵行為第5項の利敵表現物条項だ。

 朝鮮半島の分断状況、軍事的対峙などに関する文章と言葉を持続的に公表しようとする場合、上記の3条項が現実的な強制力を持っていると認識しないケースはほとんどない。憲法裁判所が近い将来に判断をすると予想されていたが、先日から労働界を中心としたスパイ団事件に対する被疑事実が公表されている点、過去に憲法裁判所が何度も関連条項に対して合憲決定をした事実があり、違憲決定が出る可能性が高いと予断することは難しい。

 万が一、憲法裁判所が上記の3条項に対する違憲判断を下した場合、韓国社会には地殻変動と言える変化が避けられないだろうし、朝鮮半島分断、軍事的葛藤などに対する言葉と文章の範囲と深さが大きく変わる見通しだ。しかし、それは未来のことだ。現在は法の網に掛からないためには、国家保安法の存在を認めなければならず、そうせざるを得ない。そうするうちに、北韓は総体的な悪、無頼漢、平和破壊者と前提して論理を展開せざるを得ない。

 核戦争の危機状況における国家保安法及び憲法1条2項

 最近、北韓の核、ミサイル問題と韓米による超強硬対応によって朝鮮半島での核戦争の危機感が高まっている。北韓の核を含めた米国の韓国に対する核の傘提供などが含まれた朝鮮半島核問題は、休戦協定以後、米国による戦術核兵器の韓国導入による協定違反を公式化してから、数十年間の紆余曲折を経て今日の事態に飛び火した。

 今日の朝鮮半島事態は、休戦協定を平和協定に転換できなかった最大の原因の一つが米国という点、今日の米国の中国とロシアに対する軍事戦略推進の過程で、北韓の核とミサイル問題が過度に膨らんで悪用されており、韓国政府が対北韓政策を積極的に支持・参加する点などに対する是非を明らかにしてこそ、その輪郭が明らかになり解決策模索も可能だ。

 ところが、親北反米という社会的統制ムードの中で、国内の巨大与野政党はもちろん、進歩的政党や学界、マスコミなどがそれに対する言及を無視しており、朝鮮半島問題の平和的解決法の模索が遠いというのが実情だ。このような非正常を一般化させた最大の原因は国家保安法だ。

 国家保安法は、北韓地域のすべて、住民全体を反国家団体地域とその団体員と規定しており、北韓は息づかいさえ反国家的だという笑い話も出るほどだ。北韓が“あれこれするのは間違いだが、ああいうことは良くやったのではないか”とか、“昔の小説で見れば敵将だとしても、褒められることがあれば、そのように応じるべきではないか”というふうには決して許されない遠い国の話に過ぎない。鼓舞称賛の物差しで有無罪が隠されなければならない立場を避けるためには、判断を中断するか。黙らなければならない。

 国家保安法は、北韓に対して見聞きしたり行動したりせず、想像もするなという法律で、それは同法の第2・3・4・5条「反国家団体」/第6条(潜入・脱出)第7条(称賛・鼓舞、宣伝、同調)/第8条(会合・通信/第9条(便宜提供)/第10条(不告知罪)などに規定されている。

 国家保安法は憲法1条2項、すなわち「大韓民国の主権は国民にあり、すべての権力は国民から出る」に反する。国家保安法第2条、第3条、第4条、第6条、第7条、第8条、第10条が特にそうである。憲法1条2項は「大韓民国の主権は国民にあり、すべての権力は国民から出る」となっているが、国民の生死を決める状況に対する国民主権は国家保安法によって完全に封鎖されている。

 韓米と北韓が互いに刺激する軍事行動と武力示威を行う際、韓国では北韓は主敵だという観点で現在の朝鮮半島軍事状況を説明して展望しなければならない。北韓壊滅という範疇から外れては困る。それだけではない。朝鮮半島の分断状況と軍事的対峙などについての文章と言葉で言及しようとすれば、国家保安法2条1項反国家団体条項、7条1項利敵行為条項、7条5項利敵表現物条項を意識しなければならない。

 思想と表現の自由を制限する国家保安法のため、朝鮮半島の危機状況でも集団知性の効果は期待できない。同法によって危機解決の方向は「北韓壊滅」と定められており、他の見解は国論分裂、利敵行為、従北、仲間争いなどで糾弾されるものだ。

 この法律が数十年間続き、北韓に対して上限のない憎悪を浴びせるのが正常だという主張が固定観念で固まっている。全国民は沈黙の中で見守る状況で、軍だけが戦争を防ぎ有事の際に敵を壊滅させる戦略樹立と訓練に奔走し、政界やマスコミはまるで戦争ゲームのように中継放送するだけだ。

 国家保安法は、北韓地域の住民全体を接触、通信不可の対象に強制し、親戚間の最小限の関係さえ不法視している。同法は同時に、「国民の誰もが北韓に接して考えれば、直ちに非理性的な存在に転落する可能性がある」という深刻な国民侮辱的内容を盛り込んでいる。

 国民主権の時代で大統領も国民が選んで弾劾するのに、北韓に対してだけは国民の目と耳を覆う国家保安法が持ちこたえている。これは国民を北韓と関連しては非理性的存在に格下げさせている。首都圏の居間で視聴できる中国CCTVは、朝鮮戦争終戦70年特集で、戦争当時、朝鮮半島で輝かしい武功を立てた中国共産軍の英雄を放映している。国家保安法が北韓を敵対視して全滅の対象に規定している根拠が、冷戦時代の思想と理念の差異でないならば、同法はこれ以上存続する根拠がない。

 南北は1991年9月に同時に国連に加盟し、国内では1972年の7・4南北共同声明以後、2018年まで数回の首脳会談が開かれた。また、南北に政治・経済・軍事・社会分野で各種の南北総理級会談、南北高位会談などを通じて宣言や各種の合意事項を発表し、北韓を依然として反国家団体と主張する国家保安法と相反する論理的矛盾が存在し、国内外の混乱が少なくない。

 韓国内部に反北を前提とする国家保安法が存在し、同時に統一を目指す南北基本合意書や「南北交流協力に関する法律」などが存在することで、完全に矛盾する二つの法価値・体系が併存している。これに伴い現在、北韓は「反国家団体」、「敵」であると同時に統一のための対話と交渉の対等な主体である二重的・矛盾的法的地位が付与されている状態で、正常化しなければならない。

 政治思想や理念というのが歴史を通じて見れば一時的なケースが多い。このような点から見て、いわゆる親北勢力と接触したり交流協力することを厳禁したり、最高刑で処罰したことは、民族史で永遠に指弾されるべき罪悪だという批判を避けられない。韓民族が分断以前に1千数百年間統一国家を成して暮らしたという点で尚更だ。

 国家保安法は、北韓を害するよりも韓国社会内部の正常な意思疎通文化が根を下ろすことをできなくし、行き詰まった社会、正常な競争ができないようにした原因の一部になった。にもかかわらず、国会が同法の改廃に関する議論を第21代国会会期末まで先送りしたのは、国民の政治作男である国会の職務遺棄だという批判を招いている。分断状況を終息させることだけが、朝鮮半島と韓民族の平和と安定を確立できるという点を想起するとき、国家保安法は早急に法典から消えるようにしなければならないだろう。

 今日の新冷戦が到来する不吉な兆しが同時多発的に起きる状況を見ると、国民主権にふさわしい政治と統一努力が急がれる。米中対立が激しくなっている状況で、韓国は地政学的特性から見て、自主国の力量を発揮してこそ北東アジアの平和と安全が根付くように寄与できるだろう。

 国家保安法はかなり前から国際社会で悪法として指弾され、思想と表現の自由を封鎖しているという点などで、すでに無くならなければならなかった。今日、韓国が世界で経済力10位、軍事力6位の水準であるにも関わらず、国家保安法のために北韓に対しては大統領だけが統治権レベルで接触する奇妙なことが起きている。

 数十年前、東西の理念対決が終息した状況で、巨大与野党が第21代国会会期末まで国家保安法の論議を中断することにしたのは、主権者である国民を犬や豚と見る振る舞いに過ぎないという批判を避け難い。

 韓米同盟の実体、不平等な内容が深刻

 韓米同盟の核心は韓米相互防衛条約だ。この条約は、李承晩(イ・スンマン)が北進統一を主張し、休戦協定締結に反対しながら米国と締結した条約で、平和協定の推進を直接・間接的に妨げた。この条約条文のいくつかは、国連加盟国の地位に合わない不平等な内容を含んでいるが、その中で最も深刻なのは第4条だ。

 第4条は、米国が自国の軍事力を韓国のどこにでも配置する権利(right)を行使できるようになっており、韓国の軍事的自主権が源泉的に排除されている。米国が享受している軍事的特権を保障する同条約の派生物が、1966年に作った駐韓米軍地位協定であるSOFAだ。

 SOFAは第4条の付属協定で、米軍に対する韓国政府の基地。施設提供を規定したものである。このため、SOFAによって提供される駐韓米軍基地は治外法権地帯の特権を享受し、米軍の韓国内での軍事的行動などに対する規定が皆無で、駐韓米軍は訓練計画などを韓国に通知する義務さえない。

 第4条の国際法的な意味は、結局、駐韓米軍駐留費の一部を韓国が負担するようにする防衛費特別分担金協定(SMA)の源だ。駐韓米軍駐留費は米国が負担することにしたが、SOFA規定5条2項を根拠に1992年に遅れて作られたものだ。韓米が毎年SMA交渉を行い、トランプが数年前にその金額を5倍に上げなければならないと言ったのも、第4条の「権利」に注目した米国の法治主義に基づいたものだ。

 第4条は米国の高高度ミサイル防衛システム、サードの韓国配備の根拠となり、近頃、随時に朝鮮半島に出現する米国の戦略資産の進出を可能にしている。また、対北先制攻撃や斬首作戦、北韓占領を内容とする「作戦計画5027」などが可能な根拠となっている。

 第2条は「武力侵攻の脅威」に対する判断を、米国が一方的にできるようにした。これは、米国が1990年代から最近まで北韓を先制攻撃する戦略を検討しつつ、韓国政府と事前協議しない根拠になっている。今日の韓米軍事同盟で誰が甲、乙なのかということが明白になる条項が4条、2条であり、このため北韓が韓国政府を軍事問題から交渉対象として排除する理由の一部になっているという。

 韓米相互防衛条約第4、2条などに基づき、米国は駐韓米軍司令官に国連司令官、韓米連合司令官の帽子をかぶせた。米軍将官が3つの役割を同時に遂行するということだが、これは国連軍司令部が戦争防止に力を注ぐなら、駐韓米軍司令官と韓米連合司令官は戦争の勝利を目的としている。そのアイデンティティが互いに衝突するのだ。これは、米国が世界最強の軍事力を背景に朝鮮半島で片手に戦争、もう片手に平和という手段を振り回すのと同じだ。

 国連軍司令部、対北収復作戦と斬首作戦などに知らぬ存ぜぬ、職務遺棄

 韓米連合軍司令部が北韓への先制打撃や収復作戦・斬首作戦を遂行しても、国連軍司令部は知らぬふりをして職務を放棄しているだけだ。国連軍司令部は陸上を通じた南北交流協力を阻止する役割をしており、朝鮮半島有事の際、北韓地域の統治を担当する主体だという主張を展開している。

 駐韓米軍司令官が米国政府の指示に従って同時に衝突する役割を果たす矛盾が、韓米両政府の黙認の下で続く限り、南北の自主的平和統一努力が成果を上げることは難しい構造だ。米国は中国、ロシア、日本などと共に朝鮮半島分断を好んでいるためだ。

 李承晩は共産主義に対する無限の恐怖を前面に掲げたことで有名だが、休戦協定の交渉当時、韓国軍は60万人近くいたが休戦協定を締結すれば韓国が共産化するとして、米国の戦争自動介入を可能にしたくて韓米相互防衛条約を推進した。しかし、この条約第3条を見ると、米国は朝鮮半島に軍事介入をする場合に自国の憲法手続きに従うとされており、李承晩の期待が満たされなかった。

 朴正熙(パク・チョンヒ)は、第4条が米国によって専横される可能性があるとして、1960年代半ばに車智澈(チャ・ヂチョル)を前面に押し出し、国会とマスコミを通じてその問題点を浮き彫りにしたことがある。朴正熙が米国からベトナム戦争参戦の見返りを更に得るための政治工作だった。朴正熙はしかし、駐韓米軍撤退計画が発表されると、核兵器自体の製造を掲げて米国に圧力をかけたが、韓米連合軍体制を発足させて戦時と平時作戦権を米軍が行使するようにした。

 駐日米軍と自衛隊は相互独立体制を維持する同盟関係だ

 韓米相互防衛条約の問題は、フィリピンと米国の軍事協定が△米軍はフィリピン軍部隊内で該当地域の同意を得た場合にのみ一時的に駐留することができ、△フィリピン国内法の適用を受けて永久基地は作れず、△米軍が投資した独自施設は今後フィリピンに譲渡することになっているという点と比較すれば明らかになる。

 国内では駐韓米軍基地や法的地位問題を取り上げる際、同条約の下位法であるSOFAだけに注目することは是正されなければならない。この条約は韓米が改正などを行うことができず、第6条によって廃棄だけが可能だという点で、韓国政府が同条約の廃棄を米国に通告する形で条約正常化を図るべきだろう。

 米国は、韓米日軍事連帯や連合を強化し、中国とは外交、経済の責任者が会って意思疎通する大国主義的な行動を見せている。すなわち、戦争一歩手前までの安保危機の中でも、国家利益や政権利益を追求し、執権の基盤を固める作業を行っている。韓国政府は偶発的な衝突が起きた場合、どのように戦争を防止し平和的に解決するかを国民に明らかにしなければならないが、そうしておらず心配だ。


 尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領の対北強硬姿勢と韓日米軍事協力関係推進の問題点

 尹錫悦大統領は、李承晩と安保分野で外国勢力に執着してオールインするという点で似ている。南北がいつか統一を成し遂げる韓民族の半分という点を全く認めない雰囲気だ。

 尹大統領は大統領選挙前後の過程で、対北先制打撃、独自の核兵器開発の必要性、韓米同盟の強化を強調しながら、執権の約1年間、それを実践してきた。そして、核を頭に載せて生きることはできないとして、北韓に対して過去の政権の交流協力努力を「敵に平和を乞うやり方」と批判し、武力強化が平和を保障するという論理を掲げている。

 その結果、韓米日軍事関係の増進を最優先目標にしたかのように、韓米同盟の強化と礼賛を強調しつつ、米国政府による大統領室盗聴疑惑も問題ないと蓋をした。日本に対しては、強制徴用問題や福島原発汚染水問題に対して、屈辱外交という批判が出るほどの低姿勢外交行動を続けている。ところが、日本は戦争犯罪や強制徴用の事実を否定し、独島領有権を教科書に含ませ、日本の未来世代が反韓感情または未来の韓日葛藤を構造化させる問題に生ぬるい対応をしている。

 尹大統領は、北韓の核を阻止または廃棄することを至上目標とし、それは米国が先頭に立っているNATO(北大西洋条約機構)、クアッド(Quad、4カ国安保会談)など、中国、ロシアを牽制する安保機構に韓国が積極的に参加するのが最上の対策だと考えているようだ。そのため、韓国が最悪の水難に見舞われている状況で、ウクライナを電撃的に訪問したりもした。

 尹大統領は、北韓と韓米が相手に核攻撃を公言し、檀君(訳注:神話上の始祖)開国以来最悪の民族間対立数値が高まっている状況なのに、戦争防止のための対策を十分に立てていないようで残念だ。尹大統領は韓米日など外国勢力との連合体制が唯一の解決策であるかのように打ち出しているが、朴正熙、金大中大統領らが朝鮮半島戦争を防止するために努力した事実などを軽視している。

 過去、大統領たちが北韓と意思疎通を試みた歴史的事実、平和統一に対する憲法規定に対してどのように考えているのか、現政権は国民の前で明らかにすべき責務を履行していない。尹大統領政府は、「北韓との戦争不死」を叫んでいるが、核兵器も含まれるかも知れない戦争後の韓国社会がどうなるのかなどについては沈黙する奇異な態度だけを示している。

 米国と中国が台湾問題、経済問題などで衝突寸前のきわどい姿を演出するが、両国の国防責任者たちがホットラインなどを維持しながら軍事的衝突を予防しようと努力する姿を参考にしなければならない。戦争は政治の一部であり、戦争発生以前の状況は最大限管理しなければならないという点を、軍統帥権者は常に記憶しなければならない。

 南北が全滅するかもしれない危機状況を傍観する矛盾を清算すべきだ

 今日の朝鮮半島危機は、核戦争の可能性に対するものだ。韓米と北韓はいずれも核使用を前提にした宣伝戦を強化している。核兵器の破壊力は広島の場合などで確認されたように「全滅」、「生きた者が死者を羨む生き地獄」に他ならない。

 朝鮮半島の軍事的衝突が、ややもすれば第3次大戦に飛び火し、人類が全滅する恐れもある。このような状況だが、政界、マスコミ、学界、市民社会団体などは静かだ。すべて分かって各自生き延びようと頭を転がしているだけだ。

 ①北韓の核兵器のために、戦争犯罪も否定する日本に屈辱外交をしてまで同盟体制に進むことが最善の選択なのか、②韓国の軍事的主権を代行する米国が先頭に立った超強硬対北戦略に韓国はそのまま従っていけばいいのか、③朴正熙、金大中元大統領などの南北和解協力を通じた戦争防止努力は完全空振りだったのか、④戦争が果たして唯一の未来なのか、⑤戦争が起きれば首都圏住民などの安全問題はどうなるのか、⑥もし核戦争が発生したらどうすべきか、⑦戦争で統一が可能かなどについての質問は誰もしない。

 韓国社会では、自分も死んで周りはもちろん子孫も被害を受けたり、もしかすると第3次大戦に飛び火しかねない朝鮮半島の未来の可能性について、公論化を通じた妙手探しをしていない。憲法1条2項は「大韓民国の主権は国民にあり、すべての権力は国民から出る」となっているが、国民の生死を決める状況に対する国民主権は国家保安法によって完全に封鎖されている。軍統帥権者である大統領だけが軍を陣頭指揮し、軍は「数十倍で報復する」と万全の態勢を強調している。

 過去の戦争なら局地戦または通常兵器による被害にとどまった。しかし、核兵器は違う。このような変わった状況で、数十年前の国家保安法が依然としてすべての上に君臨している。数十年前の東西理念対決が終息し、21世紀に入ってK-POPが世界を牛耳っている状況で、国家保安法のような野蛮な法が存在し、巨大与野党が第21代国会会期末まで議論を中断することにしたのだ。

 今日、お茶の間で中国CCTVを視聴できる状況で、北韓式社会主義に感染することを懸念する国家保安法が存在し、戦争の危機に瀕した現実に対する科学的かつ客観的な分析、展望が許されないというのは話にならない。

 1千万離散家族の特殊性などが含まれた南北住民が全滅するかも知れない危機に陥った状況だ。自分自身はもちろん、民族皆が死ぬかもしれない危機を対岸の火事のようにしたり、韓米の血盟だけが至高至善だという態度が強要される悲劇は、もはや清算されなければならない。(コ・スンウ 言論社会学博士)■

原文出典→http://www.mediatoday.co.kr/news/articleView.html?idxno=311664