topic-10
性暴力を訴えた後に解雇・・・駐韓米軍と闘う女性の絶叫 【SBSニュース】2022.1.25

 [10秒整理]
– “就職して1ヵ月もならずで歯科院長がセクハラ・・・人が変わっても広がった性暴力”
– “望まない身体接触を拒絶すると・・・何故、結婚しないんだ、レズビアンじゃないのか”・・・日常化した性暴力
– “性暴力・職場内のパワハラを米軍内で捜査依頼すると、‘調査’ではなく‘罷免決定通知’が送られてきて”
– 雇用労働部の調査にも無応答・・・“SOFA(地位協定)に従って処理する”との答弁のみ
– ドイツ・日本も変わったSOFAの労務条項・・・韓国はいつになったら変わるのか

 軍隊内の性暴力やいじめ問題は、その特有な閉鎖性のために一般の会社より顕在化しない傾向があります。空軍のイ・イェラム軍曹(訳注:男性の上官によるセクハラを幾度も訴えたが、黙殺された末に自殺した女性軍人)、陸軍のユン・スンヂュ一等兵(訳注:軍隊内での暴力事件によって殺された男性兵士)事件などは、彼らが命を失ったからこそ実体が判明しました。いま、この時間にも軍隊のどこかでは性暴力、殴打、過酷行為、村八分などで苦痛を受けている軍人が確実に存在しているでしょう。
 こんな状況だから、‘大韓民国内の治外法権’地帯と呼ばれる駐韓米軍の場合、もはや言うまでもないでしょう。この間、駐韓米軍で勤務する韓国人労働者らの声が、部隊の塀の外に飛び越えることができなかった理由です。駐韓米軍で勤務して昨年解雇された歯科衛生士の事情は、だからこそ私たちが真摯に探ってみる必要があります。雇用労働部に受付けられた数百ページの陳情書、日記の様に書き綴られたインターネット掲示板の文章、米軍側に送った各種の書類などを通して、彼女が8年の間に経験した出来事を再構成しました。そして、何が間違っていて、何を変えなければならないかも取材しました。

 “就職して1ヵ月もならずで歯科院長がセクハラ”
 李某(45)さんは2012年6月、大邱(テグ)市のある米軍部隊で歯科滅菌技師として勤務を始めた。周辺環境と人々すべてが不慣れだったけれど、生涯の職場として考えただけに、すべてに最善を尽くそうと努力した。李さんによれば、就職して1ヵ月ほど過ぎたある週末の夜、運動を終えて家に帰る自分に、韓国系米国人将校だった当時のA歯科院長が、夕食を一緒に食べようと提案した。李さんは職場上司の誘いだったので、一緒に食事をして二次会の酒場では酒も呑んだ。その後、家に帰ろうとする彼女にA院長は、ビヤホールでもう一杯だけ呑もうと誘い、李さんは断れなかった。
 深夜零時近くにA院長は、『通行禁止規定があるからどこかでちょっと休んで行こう』と言いながら、李さんをモーテルの入口まで引っ張って行った。李さんは拒否し、A院長は執拗だった。この過程でセクハラが行われた。

**********************************************
【李某さん:性暴力被害などの告訴人】
 週末と平日とに通行禁止時間(curfew)があります。通行禁止があって、その時間に外に出ていたら、普通一番軽い処罰が降格です。
 - (先生に、どこに)入ろうと言われたなら、普通の提案でしょうか?
 = この人は、とりあえずはすぐ上のスーパーバイザーでもないし。 例えば、私は二等兵なのに その人はまったく
 - 中隊長?
= その程度の水準だということです。 軍人としては。
 それが…これから… 何か…はぁ…正直あまり記憶したい気がしないんです。
**********************************************

 李さんは、『私と院長の関係は軍人としてみれば中隊長と二等兵の違いでした』、『その事件以後、院長を見れば怖くて縮こまるようになるなど、苦しい日々を送らなければなりませんでした』と打ち明けた。2018年2月、李さんはその事件を部隊に申告した。その時期は、李さんが他の米軍部隊に勤務していた時期だった。
 李さんに申告まで6年が掛かった理由を尋ねた。
 『職場にずっと通わなければならなかったので、我慢し続けました。そして、仕事だけ死に物狂いでやっていました。でも、新しい部隊でもっと惨いことを経験すると、堪らなく腹が立ったの。変わらないのかと思い、まず、以前に受けた性暴力事件と共に、職場内のいじめから問題提起を始めたの』と答えた。

 “レイプした新しい部隊の院長が、翌日に事後避妊薬を飲めって”
 李さんは、もっと惨たらしかった‘その日’の出来事に対して語るのを躊躇し続けた。煮えたぎるお湯にもう一度手を入れてみなさいという質問のようで、お湯が冷めるまで待ちに待った。 そして、遂に李さんが苦しい思いを打ち明けた。
 彼女が大邱から京畿道平澤(ピョンテク)の米軍部隊に移った年は2016年だった。事件はその年の秋に起こった。新しく来た韓国系米国人将校のB院長が、李さんを食事に誘った。李さんは、また同じように悪い人なのかと冷やりとした。でも、ずっと人を疑いながら生きていく事はできないとの考えで、誘いを受け入れた。友人として一緒にご飯を食べた後、簡単な酒の席も共にした。他の職員たちもB院長の家で映画を観たり食事したりすることもあって、一緒にいる間に変わった点を感じられなかったことで、李さんは『B院長が、自分の家でもう一杯だけやろうとの誘いを断ることができなかった』、『それを振り切れなかった私が本当に・・・』と、言葉を続けられなかった。
 李さんは‘その日’、B院長が呑んでみなさいと持ってきた商標のないお酒を一杯呑んで気を失ったという。翌日、目を覚ますとすぐに帰宅したが、B院長から電話が掛かってきた。『とにかく、事後避妊薬を飲んだ方が良い』という院長の言葉に目の前が真っ暗になった。
 李さんは、すぐに近所の産婦人科に行って診察を受け、処方箋を受け取った。B院長自身が犯した事をはっきり確認しろとの趣旨で、彼を病院に呼び出した。診療費は李さんが出した。何をしなければならないか、何も考えられなかったという。当時の状況に対して李さんは、『その人に、金をくれと病院に呼び出したのではないということをはっきりと言いたかった』、『それ以上、申告であれ告訴であれ、何かを考えることができる精神状態ではなかった』と話した。
 海外に駐屯する米軍は、歯科部門で優秀な職員を20名ずつ選抜して定期的に賞を与えるという。「Pacific Regional Dental Command TOP20」という賞だ。李さんは、これを二度授与された。李さん以外に韓国人が授与されたケースは無かったという。皮肉にも、トラウマを忘れるために歯を食いしばって働いたおかげだ。二度の性暴力事件だけでも、職場というリング上で倒れそうだったが、李さんはそうしなかった。

**********************************************
【李某さん:性暴力被害などの告訴人】
 自分の故郷から持ってきたという酒を見せても、瓶にラベルが無いんです。
 呑んでからソファーに座っていて、すごく眠たかったんです。だから、寝ました。はい。
 - ところで、翌日に何だと言って電話が掛かってきたのですか?
 = 次の日、あれこれあってから・・・家に着いたら、そういうの(事後避妊薬)を飲まなきゃいけないと思うって
 = それで、その処置が必要だと思って病院に行って、来いと言いました。一緒に行きました。それで、私がお金を出しました。私はあなたからお金をもらうためにこうしたんじゃないから、私がお金を出して良くない薬を飲んで
**********************************************

 “何故、結婚しないんだ、レズビアンじゃないのか”・・・日常化した性暴力
 大邱にある米軍部隊で働いていた時だ。米国人の既婚者の同僚が、消毒室などで「付き合おう」と望まない身体接触をしようとした。甚だしくは、李さんの家に行くといってSNSメッセージを送ってきたという。それを断ると、その時からその既婚者は李さんに“レズビアンだから男性に興味がない”というなど、ありもしない話をでっちあげて‘娼婦’という言葉も躊躇しなかったという。我慢できなかった李さんは、上官に報告して措置を要求したが、韓国人である李さんの話をそのまま聞こうとはしなかった。
 京畿道平澤の米軍部隊で勤務した時のことだ。一緒に働く同僚らが、勤務した時間より多く働いたとコンピュータに入力しているのを発見した。また、実績を水増しするため歯科衛生士が行ってはならない「診療決定」をする同僚もいた。李さんが経緯を問うと、彼らはその時から仲間外れや悪意の噂でやり返した。李さんはだんだん周辺から孤立していった。
 李さんの正しい話は、ねじ曲げられて無駄口や虚言とされた。コロナ禍が深まった2020年4月、感染の危険性で歯科用の共同消毒機器を使用するなとの指示が下ろされてきた。李さんは従い、同僚は従わなかった。見過ごそうかとも思ったが、李さんはそうせず立場は更に狭くなり、針の筵に追いやられた。
 一度、こんな事もあった。韓国系米国人の軍医官が、賞味期限切れの食べ物を韓国人労働者に配った。元々は職場内の売店で売っていた物だったが、その日に限って無料で提供したとのことだ。配られた食べ物の中には歯形がくっきりと残っていた食べ物もあったという。腹が立った李さんは、再発防止のため中間管理者に是正を要求するメールを送った。そうすると、返ってきた答弁は、『該当の軍医官と話をしたところ、賞味期限が10日以上残った食べ物だったと。嘘をつくな』と、むしろ李さんを叱責した。弱り目にたたり目で、賞味期限切れの食べ物をもらった韓国人労働者も、証人として立つことを躊躇した。
 この事件の後、李さんは孤立無援になった。それまでは、同僚たちが陰でこそこそ言い放っていたが、今では露骨にいじめるようになった。服を着替える時、鉄製のキャビネットの開閉音が大きくて暴力的だという指摘が出てきた。患者がいない時間にゆで卵を一つ食べても‘勤務時間に何で飲食するのか’と、ひどく叱責された。李さんは、これ以上耐えられなかった。「仕事だけしよう」と念を押し、封印してきた仕事を一つずつ取り出し始めた。
 2021年2月、李さんはすでに調査を要求していた大邱でのセクハラ事件を含めて、平澤基地であったレイプの件と、この間に行われてきた職場内のいじめ事件などを整理して駐韓米軍犯罪司令部に捜査依頼した。ところが、2ヵ月後に李さんが受け取ったのは、「捜査中」という返信の代わりの「罷免予定通知書」だった。そして、4ヵ月後に「罷免決定通知書」が送られてきた。
 駐韓米軍側が送った「罷免決定通知書」によれば、李さんは勤務地で騒乱を誘発し、個人や機関の評判、権威などを損傷する虚位、または悪意的な陳述を行ったという。李さんは、『すべては大邱のセクハラ事件を申告した後から間違ってきたようだ』としつつ、『解雇がこんなに簡単なものだとは想像さえできなかった』と鬱憤を打ち明けた。

**********************************************
【李某さん:性暴力被害などの告訴人】
 一応、牛乳とか豆乳とか、その他おやつのような種類です。ラーメンの様な物も、一旦は私が問題提起したラーメンの様な物もあり、人としては基本じゃないですか。そして、普段でも何らかの食べ物を持ってきて皆で分ければ、それは本当にありがたいことですよ。でも、食べた物を持ってきてくれるというのは、そんな物があればとても不快なことですから。
 CIDという米軍犯罪司令部に依頼をして、そこで手続きをしましたが、問題が何かというと、こんな種類の事件は管轄処が米軍になっているんです。それならば明らかでしょう。
 - どんな返事が返ってきましたか?
 = 返事が来ても、ほとんどそれで不起訴処分だとの話を聞きました。
 - 理由はもしかして?
 = 詳しく話をしてくれなかったことを覚えています。そして、不起訴処分の話を聞くや否や、私が少し興奮しました。私がその時少し怒ったんです。それで、お前は誰が死んだら捜査するんだと、私が言いました。
 これが一般の会社ならば、ここでどれだけ長く続くのかと思いました。原則が壊れた所は、そんなに長くは続かないです。私が考えてもそうです。
**********************************************

 米軍側、“雇用部本庁ではない支庁が何故電話?”
 李さんはまず労務士を訪ねて行った。駐韓米軍に勝とうとして始めた闘いではなかった。8年以上、懸命に働いてきた職場でそのまま解雇処分を受け入れれば、あまりにも悔しかったからだ。労務士と共に、この間にインターネット空間で哀訴した文章、関係者たちとやり取りしたメール、文字メッセージ、病院の診療記録など、証拠になるだけのものを残らずかき集めた。そうして、何日も掛けて記憶を辿りながら「8年間の記録」を完成させた。
 次の訪問地は雇用労働部の平澤支庁だった。記録を綿密に検討したユン・ヂヒョン監督官は「処理結果を知らせてください」という趣旨の改善指導文を作成した。ところが、指導文の発送からして容易ではなかった。ユン監督官は、『平澤米軍基地に書留郵便を送ったが返送になり、電話を幾度もしたが繋がらなかった』、『苦労して米軍の人事担当者のメールアドレスを確認して指導文を送ったところ、やっと連絡がきた』と語った。
 ユン監督官によれば、人事担当者は事件に対する話の代わりに『雇用部本庁ではなく支庁から何故直接米軍に連絡したのか』と、機嫌が悪かったという。ユン監督官は、『韓国国民が米軍部隊内で係わった事件だから調査を行ってほしく、結果を知らせてくださいと言ったが、担当者は“SOFAに従って処理する”との答弁のみ繰り返した』と苦笑いした。

**********************************************
【ユン・ヂヒョン:雇用労働部、平澤支庁監督官】
 とりあえず、部隊に改善指導文を発送しました。ところが、郵便物さえも私たちが分かり得る住所地を確認することが難しく、書留郵便物も返送になりました。米軍部隊側に連絡をしましたが、電話連絡も簡単ではありませんでした。
 駐韓米軍人事部担当者の連絡処を分かるようになりましたが、それも、電話するのが簡単ではありませんでした。幾度か試みてメール情報を分かるようになり、メールでとりあえず私たちの改善指導文を送り、その後に駐韓米軍側の人事担当者に電話をして、その時になってやっと通話するようになりました。
 とりあえず支庁から、雇用労働部本部ではなく支庁から直接連絡をしたこと自体に対して良くないような話をしていました。私が、一応は国民が受けた被害内容なので、そのことに対して内容を精査していただいた後の公式な答弁を要請しましたが、米軍部隊内で起こったことはSOFA協定に従って手続き通りに進めてくれる様に望むという答弁がきました。
 難しかったのは、私が直接的に処分を行う前に調査から行わなければならず、被害内容も知らせなければなりませんが、駐韓米軍の敷居そのものが極めて高く、私が伝達することができる通路自体も探すのがあまりにも難しかったことです。
**********************************************

 SOFAの労務条項が何だって
 SOFA第17条(労務条項)は、この様になっている。<別途の規定がある場合と軍事上の必要に背馳する場合を除外しては、韓国の労働法に従わなければならない> 第17条には解雇に対する規定は出ている。現在、戦争中だったり戦争に準じる状況ではないため、解雇を除外した他の懲戒事項や職場内の性暴力、いじめなどの問題は韓国の労働法に従わなければならない。
 ところが、米軍側は「従わなければならない」(conform with)を義務規定ではなく「不応」と解釈しながら、韓国政府と対立し続けている。『SOFAに従って処理する』という人事担当者の言葉も、ここに依拠していると思われる。
 そうであるならば、SOFAに出ている解雇条項はどうなるのか。言い換えれば、李さんは今後どの様な手続きを踏むようになるのか。翌月の23日、米軍側が自らの訴請審査委員会(訴請委)を開く。ここで‘解雇手続きに問題無し’という結論が出てくれば、その時から韓国政府が関与することができる。米軍側の訴請委の結果を雇用部が再審査した後、争う理由があるとの判断が立てば、米軍側に特別審査委員会(特別委)を開くことを提案する可能性があるということだ。特別委は韓国と米国が6人以下の同数で構成される。もし3対3に意見が分かれれば、両国の大使などが参加する外交使節団が協議を再度行うことになっている。特別委に進む過程も険しく、進んでも卵で岩を割ることになるかも知れない。
 ここにもう一つの落とし穴がある。雇用部が米軍側に特別委開催を要求しても、先延ばしにされることがあるという点だ。SOFAには「適時に応じる」となっているだけで、応じない場合にも何の制裁条項が無いからだ。雇用部のチョン・テクチン主務官は、『最近の5年間、駐韓米軍内の韓国人労働者が解雇されたと申告した件数は7件』だとして、『この中で1件のみ救済された』と明らかにした。言い換えれば、全体で1万2500人余りの韓国人労働者の中で、この期間で何人が解雇されたかの統計自体が無いという意味だ。
 李さんの事件を受け持っているチェ・ヂヘ労務士は、『駐韓米軍内の韓国人労働者らも国民年金や健康保険など、韓国に税金を納める国民』だとして、『ところが、米軍部隊で働いているとの理由のみで国内労働法の保護を正しく受けられない残忍な状況』だと診断した。

**********************************************
【チェ・ヂヘ:労務士】
 勿論、国内の企業に勤務される労働者の方々も、近頃、職場内でのいじめや上司のパワハラに対して苦痛をとても多く訴えておられます。それにも関わらず、今回の事件の様な駐韓米軍の事例の場合には、非常に特殊で閉鎖的な雇用形態です。この様な形態では、国内の企業よりはもう少し職場内の嫌がらせだとか上司のパワハラに対して訴える方法と手続きに関して、確実に更なる困難を感じていらっしゃいます。事実、駐韓米軍で勤務される韓国人労働者の方々も、まったく同じ4大保険(訳注:①疾病:健康保険、②老齢:国民年金、③失業:雇用保険、④障害:労災保険)も納付するまったく同じ労働者です。それにも関わらず、職場内のいじめに対する救済方案が無い状態で、この様な部分に対して解雇されねばならないのかを争うことができる余地が生まれます。
 それさえもSOFA協定などが優先される状況なので、これに対して大韓民国の労働者としての最小限の権利も保護されていないのが現実です。特に、この様な切ない状況を世の中に知らせることにも大きな勇気と力が必要だという現実を、とても残念に感じます。
*********************************************

 雇用部はSOFAの不合理な部分を改善するため、私たちと同じく米軍が駐屯するドイツと日本の事例を研究した。それによれば、ドイツは私たちの様に、米軍がドイツの労働者を直接雇用する。最も大きな違いは、労務条項にドイツの労働法に‘必ず’従うと修正したという点だ。初めは私たちの様に米軍が決定権を持っていたが、自国民に有利な様に変えたという話だ。
 日本は防衛省が自国民を採用した後、米軍側に労働を提供する間接雇用方式を採っている。日本政府が賃金を出すため、労務関係もまた日本が直接調整することができる。二つの国が共に私たちよりは自国民に対する法的保護装置を細かく準備したわけだ。
 訴請委を前にした李さんは不安な心境が先立つ。「この闘いを続けることができるのか」という不安だという。勝つことができるとの考えは敢えて出来ないとも話した。只、『米軍側が意のままに解雇しても韓国人は敢えて抵抗しないという認識を持っているみたいで、声を上げざるを得ない』と語った。李さんが打ち上げた小さなボールが途中で裂けてしまうのか、それとも空に勢いよく伸びていくのか、未だ断言することができない。一つ明らかなことは、彼女が「8年間の記録」を掲げて米軍部隊の塀の外に出てきて世の中に知らせたという事実だ。李さん‘たち’の闘いは今からだ。■

(取材:チョ・ギホ、PD:キム・ドギュン、映像取材:キム・ハンモ、編集:チョン・ヨンヒ、デザイン:チェ・シニョン、政策:Dコンテンツ企画部)■

原文の出典→ https://news.sbs.co.kr/news/endPage.do?news_id=N1006616005&plink=ORI&cooper=NAVER#

topic-9
“国家暴力の被害者を消滅時効に閉じ込めるな” 【Ohmynews】2022.1.20

[インタビュー]
‘賠・補償法制化’を推進する鄭根埴(チョン・グンシク)第2期真実和解委員会委員長

 結局、虐殺・拷問・間諜捏造の後遺症を経ながらも、国家に何の責任も問えない被害者だけが残った。
 第1期真実・和解のための過去史整理委員会(2005~2010、“真和委”)が、朝鮮戦争時の民間人虐殺被害者として認定した犠牲者は2万620人、この中で国家から被害補償を受けたのは5600人余りに過ぎない。それも、損害賠償訴訟を直接請求して勝ったケースだ。
 最初の訴訟から悔しく終わった。裁判所の‘消滅時効’の解釈のためだ。1950年に警察が住民97人を銃殺した「羅州(ナヂュ)警察部隊事件」を始めとして、2007年から訴訟が始められたが、続々と敗訴した。‘不法行為がある日から5年が過ぎた損害賠償請求権が消滅した’という理由だ。9年後になってやっとこの様な法理が違憲だという憲法裁判所の決定が出たが、救済の手段はない。現行法上、遡及を適用することができないからだ。
 保守政府執権10年の間の逆走も一役買った。‘司法壟断(独り占め)’梁承泰(ヤン・スンテ)最高裁判所長の当時(2011~2017)は特に目立った。梁承泰最高裁判所長は、『“真和委”の真実究明決定日時から3年以内に提起できなければ請求権がない』とか、『再審無罪を受けて刑事補償が確定された被害者は、それから6ヵ月以内に損害賠償を請求しなければならない』と、便宜通り法理を適用した。3年と6ヵ月を守ることができなかった被害者らの敗訴確定も増えていった。
 その間、高齢の被害者らは続けて世を去った。鄭根埴、第2期真和委委員長が機会あるごとに「包括的な賠・補償の法制化」を口にする理由だ。
 『2013年に、すでに最高裁判所で賠・補償関連特別法が必要だと指摘した。9年間、国会に発議された法律改正案だけで十程度だが、国会の敷居を越えたことが一度もない。遂に、国会の論議が始まり、第2期真和委は立法の必要性を求めている。国会が緊密に推進すれば成就できるものと期待する。』
 2020年12月に出帆した第2期真和委は、2010年急に活動を終了した第1期真和委の延長線にある。第1期真和委は2005年、政府次元の過去史清算が初めて本格化され、軍事政権時期の人権侵害、朝鮮戦争時期の虐殺事件などを調査する機構として組織されたが、以後、李明博(イ・ミョンバク)政権が過去史清算の意思を見せず、4年2ヵ月という短い期間で終了した。
 12月時点で第2期真和委に受付けられた真相究明の申請は1万2526件(1万4345人)で、朝鮮戦争の民間人犠牲事件だけでも9000件を超える。短い調査機関のため、第1期真和委で究明できなかった課題も山積しており、過去10余年間に政府が謝罪、名誉及び被害回復、再発防止対策用意などにそっぽを向いたせいで、再び第2期真和委に受付けされた事件も相当数だ。
 第2期真和委は20日、国会で関連討論会を開催する。「共に民主党」議員6名、「国民の力」議員3名など、与野党が共同主催する。14日に[Ohmynews]と会った鄭委員長は、『国家暴力被害者のための統合的な被害補償措置が急がれる』と強調した。

 以下は、鄭委員長との一問一答を整理した内容だ。

 国家機関の謝罪と真正な追悼が重要な理由
 ― 韓国社会の過去史清算には加害者処罰が抜け落ちているとの批判が多い。
 『70年が過ぎた事件と発生したばかりの人権侵害問題は、処理が異ならざるを得ない。国家の責任面では公式謝罪と誠意ある追悼が必要だ。再発防止の側面で、平和を維持するための最善の努力も必要だ。だから、真和委は国家機関に謝罪と追悼を勧告している。しかし、2010年以後の10年余り成し遂げられなかった。今回、全国の自治体を回りながら、国家と自治体次元の責任ある謝罪と真正な慰霊・追悼が共に成される時、被害者らが苦痛を軽減することができるだろうと何回も確認することができた。』

 ― 誠意ある被害救済とは何なのか。
 『苦痛を経験している当事者らに被害救済の責任を100%転化させるのは真正であり得ない。共同体の構成員が、少なくともその様な苦痛を分け合わなければならない。国家は直接的な責任と間接的な責任をすべて負わなければならない。国家がこの責任を誠実に認定して、共同体がその苦痛を分担するようになる時、誠意ある被害救済の条件が成されると考えることができる。』

 ― 第1期真和委と第2期真和委の間で10年の空白があった。過去史の和解作業に於いて、連続性が抜け落ちているとの評価もある。
 『残念な部分だ。第1期真和委は、過去史の整理作業を充分にまとめることができず、急に終了した。生存者らに対する証言採録を残さなければならないが、そうできなかった部分は本当に残念だ。朝鮮戦争関連の生存者は本当に残り少ない。真相究明にも大きな困難を来している。12年前、真和委が課題として勧告したが、政府は今まで履行しなかった。また、他の勧告事項である、常設機構の過去史研究財団の設立も同じだ。これと関連して、国会に予算を継続して要請しているが、今年は残念なことに削減された。「真実和解財団」という名前で設立準備を進める計画だ。』

 ― 現在の調査人力は十分か?
 『第1期の時より多くの事件が受付けられている。調査官の拡充が急がれる。約9000件が朝鮮戦争時期の民間人虐殺などの事件であるが、これを担当する1局の調査官は60名に満たない。9000を60で割れば150だが、一人の調査官が1年で担当できる事件は30件ほどだ。3年でも90件だ。国会に人力・予算の要請をしようと準備中だ。今年上半期には調査官が拡充され、今後の調査の輪郭を掴めてこそ、業務を支障なく進めることができる。』

― 受付けられた事件の処理を超えて、過去史清算に対する議題や方向性を提示しなければならないという指摘がある。
 『大きく見れば、国家人権委員会と真和委が、韓国を「民主・人権国家」に作り上げる制度的装置だ。人権委員会は常設機構であるが、真和委は一次的機構で限界があるという気がする。過去史業務は現在の仕事であり、未来を創っていくことだ。特に、国民の人権感受性の目線が変わり、人権侵害の意味と範囲が広くなって、兄弟福祉園(訳注1)、仙甘学院(訳注2)など、第1期の時に扱われていない事案も新たに再発見された。第2期真和委は、和解、統合の観点で、分断された共同体を回復する責務を持っている。過去史を正しく整理して克服する近道に、重要な制度的装置として機能することができるよう、もっと知恵を集めていく計画だ。』        (ソン・ガヨン記者)■

(訳注1)兄弟福祉院事件は、大韓民国釜山直轄市にあった兄弟福祉院が、釜山直轄市と委託契約を結んで、1975年から1987年にかけて浮浪者、障害者、孤児ら約3,000人を強制収容し、強制労働や暴行により513人もの大量の死亡者を出した事件。(参照:https://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%84%E5%BC%9F%E7%A6%8F%E7%A5%89%E9%99%A2%E4%BA%8B%E4%BB%B6

(訳注2)浮浪児収容施設という名分で日本植民地時代から1982年まで運営された。暴力をセクハラが蔓延し、死亡した同僚を目撃したり、遺体の処理に動員されたという証言もある。
(参照:https://www.hani.co.kr/arti/area/capital/973160.html)ハングル

原文の出典→ http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0002803741&PAGE_CD=ET001&BLCK_NO=1&CMPT_CD=T0016

topic-8 
市民団体は何故、国連事務総長に書簡を送ったのか 【統一ニュース】2022.1.17

[寄稿] 李長熙(イ・ヂャンヒ韓国外国語大学名誉教授)
 現在の南北関係の膠着原因は、表向きは米・中対立の中での北韓の核兵器と弾道ミサイル問題がトップとして連日マスコミに登場する。その責任がすべて北韓にあるみたいだ。しかし、詳細に見てみれば、韓半島の平和プロセス膠着の、より深層的、根本的な原因は、北韓にも一次的に責任があるが、米国にもその責任が更に多いと思う。
 2018年の「4.27板門店宣言」及び「9.19平壌共同宣言」(訳注:参照 https://jsil.jp/archives/expert/2019-1)での南北首脳合意の履行を、誰がより多く妨害したのか? 2018年6月の「シンガポール北・米合意」で約束した“新しい北・米関係”を履行するのに、誰がより実践して誰がより妨害したのか? 新しい北・米関係履行の失敗は、その責任は相当部分米国だということに専門家らは大部分同意するだろう。
 米国の与野政界を左右するキリスト教原理主義者(別名、ネオコン)と軍産複合体の商人は、初めから、敵対関係を終息させる新しい北・米関係を常に望んでいなかった。米国の現行敵性国家リスト国内法令に、米国の敵性国家として明示された北韓とは妥協はなく、ただ先制攻撃で制圧することが彼らの基本的立場だ。
 この様な本音を隠して合意した「シンガポール北・米合意」は、初めから米国は履行する意思がなかった。未執行の名分は、北韓の核兵器開発と弾道ミサイル発射で包装される。北韓の非核化と弾道ミサイル発射中止を促進する、南北首脳合意の履行を通した韓半島平和プロセスを妨害するこの様な悪役を、米国が公式には直接担わず、国連という米国のアバターを使って行っている。
 故に、韓半島平和プロセスに於ける米国の行為は、実際には国連司令部(United Nations Command:UNC)を外面に立てて、南北首脳合意の履行を妨害する悪役を担っている。実際に、駐韓国連軍司令官は駐韓米軍司令官及び韓米聯合司令官を兼任しており、必要に応じて三つの帽子の中を選択して使う。
 具体的な例を挙げてみよう。国連とはまったく無関係な米国太平洋司令部(米国)の直接指示を受けて動く現・駐韓国連司令部の名前で、南北韓の南北鉄道・道路連結妨害、非武装地帯の哨戒所訪問妨害、非武装地帯周辺ウォーキングの妨害など、数多くの南北首脳合意の履行をことごとく妨害してきた。
 甚だしくは、国連司令部はすでに解体(1973年12月)して法的効力を喪失した国連総会決議(1950年10月7日)で創出された国連韓国統一復興委員会(United Nations Commission for the Unification and Rehabilitation of Korea : UNCURK)及び38度線以北、非武装地帯に対する管轄権まで強弁する。いつまで米国は偽の‘国連司令部’の裏に隠れて、韓半島平和プロセス妨害及び韓半島の領土主権侵害を持続するのか問いかけたい。保守勢力と韓国政府が敢えて行えない歴史的な出来事を、この地に住んでいる目覚めた民衆がまず問題提起し、国内外的な共感帯を作って、米国の不当な主張に対して法制度的論拠を有して対抗しなければならない。
 本稿では、国連司令部の多くの不法的態度の中で、もっとも最近の、2021年12月22日の尹錫悦(ユン・ソンヨル)大統領候補による江原道鉄原陸軍第3師団白骨部隊前方哨戒所(OP)訪問に対する、国連司令部の停戦協定違反調査及びその対応措置という越権的主張の事例と、国連司令部の国連旗不法使用が何故韓半島平和に問題なのかを代表事例として探ってみる。
 特に二つ目、国連旗不法使用事例に関して、国内外の市民団体が今年の1月13日に国会正門前での記者会見を通して、国連事務総長に国連旗不法使用の調査及び禁止、そして相応措置を要求する書簡を公式に送った背景と法的な根拠を詳細に紹介して、その意味を調べてみる。
 この書簡は、“偽‘国連司令部’解体のための国際キャンペーン”が、国連司令部の主権侵害、越権行為に対する正確な理解を向上させ、それに対する対応法を提案するためのものである。

 最近の二つの国連司令部の越権事例をあげて説明する。
 初めの事例として、もっとも最近の、国連司令部の越権行為と韓国の主権行為を無視する事例が、2021年12月22日の、尹錫悦(‘国民の力’大統領選挙候補者)による江原道鉄原陸軍第3師団白骨部隊前方哨戒所(OP)訪問に対する、国連司令部の次の声明に現れている。
 すなわち、『前方師団が法的指示を遵守せず、国連司令部の承認を受けない追加人員が非武装地帯を出入りするようにした。国連司令官は該当違反事件の根本原因を把握して、停戦協定遵守を阻害する行為と民間人を必要以上の過度な危険に晒すようにする行為の再発防止のために調査に着手し、調査が完了すれば、停戦協定及び大韓民国政府と締結した基本合意に基づいて適切な措置を執る』と述べた。(訳注:参照記事 https://www.kedglobal.com/newsView/ked202112220014?lang=jp
 国連司令部の根拠のない権限に対するこの様な立場は、以下の国防部の立場で反駁される。“偽‘国連司令部’解体国際キャンペーン”が送った質疑書に対する国防部の答弁書は以下だ。
 『大韓民国は6.25戦争の当事国として国連司令部の会員国ではなく、大韓民国合同参謀本部と国連司令部は相互支援及び協調関係だ』
 国防部の答弁によれば、大韓民国は国連司令部の指揮を受けない。国連司令部が大韓民国を指揮する権限もないばかりか、「法的権限」というのも存在しない。すなわち、国連司令部が国軍の停戦協定遵守の如何を強制して要求する根拠がない。存在しない権限を行使することは違法行為だ。単に大韓民国国軍は停戦協定の維持、履行業務を支援、協調しているだけだ。
 南北の間では「4.27板門店宣言」と「9.19平壌共同宣言」に立脚して、南北交流協力と軍事的信頼構築を合意している。国連司令部も停戦協定の前文(韓半島武力衝突の平和的解決)に従って、南北首脳合意の履行に積極的に協力しなければならない義務がある。停戦協定第10条は、非武装地帯の南側地域の民間行政とスローガンの責任を負うとするが、停戦協定は前文で、純粋に軍事的性質に属するもののみに適用され、民間人の交流協力事項は例外である。「4.27板門店宣言」に基づいて南北の鉄道・道路連結を着工しようという試みを遅らせる理由が何なのか?
 二つ目は、国連司令部の不法的事例として、平澤(ピョンテク)米軍基地及び日本の米軍基地での不法国連旗掲揚に対する国連司令部の不法行為と、その法的論拠を紹介する。
 2020年11月に修正された新・国連旗法第6条2項(a)によれば、国連旗を使用する団体と個人に、『旗の掲揚が、国連と何らかの提携関係があるという事を暗示してはならない』という内容を含めて、特定条件を充足することを要求する。ところが、1994年に国連法律局と国連事務総長は、「駐韓国連司令部」は、国連組織ではなく国連とはまったく無関係(偽)であることを既に確認している。
 この様に、国連組織でもない無関係な国連司令部の国連旗使用は、国連との関係を暗示するので、その使用は禁止される。故に、平澤米軍基地と非武装地帯(DMZ)哨戒所、日本の国連司令部後方基地などでの国連旗使用は禁止されなければならないだろう。
 そして今日、“偽‘国連司令部’解体国際キャンペーン実行委員会”の主催で国連経済社会理事会の非政府機構として登録された国際民主弁護士教会(IADL)、アジア太平洋弁護士連盟(COLAP)及び米国親友奉仕会をはじめとした18の米国平和団体と韓国の平和鉄道、民主労総、コリア国際平和フォーラム、平和統一市民連帯、AOK(Action One Korea)を含めた33の平和市民団体が連名で、韓国及び日本駐在の国連司令部の国連旗使用が不法であるのか再確認するため、グテーレス国連事務総長に対して公式質疑し、記者会見(2022,1,12国会正門前)を通してマスコミに知らせた。
 国連司令部が国連旗法に違反している事を、国連事務総長に再び公式質疑を通して再確認しようということだ。今回の書簡で、改正された国連旗法に違反して国連旗を不法に掲揚、使用している所謂‘国連司令部’の違法行為に対して、国連次元での積極的な調査と相応の措置を要求するだろう。
 この公式質疑は、偽‘国連司令部’による国連権威喪失防止及び国連法発展にとても必要だ。そして、より進んでは、韓半島の平和プロセス妨害と主権侵害を防ぐのに大きく寄与するだろう。偽‘国連司令部’の国連旗不法使用は中断されねばならず、国連司令部が、これ以上米国のアバターとして東北アジアの覇権維持と新冷戦に、その悪役を中断しなければならないからだ。
 以上により、法的権限のない国連司令部が、2021年12月22日の尹錫悦大統領候補による江原道鉄原陸軍第3師団白骨部隊前方哨戒所(OP)訪問に対して、調査と措置という国連司令部の越権行為主張は取り消されなければならない。そして、2020年11月に修正された新・国連旗法に明確に違反している、平澤米軍基地及び日本の後方米軍基地の国連旗掲揚は、国連事務総長の再確認として(禁止されなければならず)、これ以上国連法と大韓民国の主権が侵害されてはならないだろう。
 国際市民団体と韓国市民団体が要請する今回の公式質疑書簡に対する、国連事務総長の肯定的な答弁を期待する。■

原文の出典→ http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=204117

topic-7 
 汚染させた者達は他にいるのに、政府が浄化するなんて 【Ohmynews】2022.1.10

 米軍基地汚染、免罪符の悪循環を断たねば・・・政府、環境主権守護の意思を持てばいつでも可能

 駐韓米軍がこの地を汚染させて、韓国国民がこれを浄化する悪循環が続けられている。
 2022年に645憶ウォンの国防予算が14ヵ所の返還米軍基地浄化事業費として支出される。2019年に返還された4ヵ所と2020年に返還された7ヵ所、2021~2022に返還予定の基地3か所がその対象だ。
 2008~2021年の間、米軍基地浄化費用に使われた国防予算は3629億ウォンであり、2022年の予算まで含めれば約4274ウォンだ。

 国民の税金で米軍基地の汚染を治癒? 国内法-韓米SOFA違反
 国内の環境法や国際環境法は、汚染原因者が治癒責任(費用)を負うようになっている。土壌環境保全法(第10条4①)は、『土壌汚染の発生当時、土壌汚染の原因になった土壌汚染管理対象施設の所有者・占有者または運営者』は『浄化責任者として土壌精密調査、汚染土壌の浄化または汚染土壌改善事業の実施を行わなければならない』と規定している。
 この土壌環境保全法によれば、駐韓米軍基地の浄化責任者は当然駐韓米軍(米国)だ。ところが、2022年度の国防予算によれば、汚染原因者ではない国防部が米軍基地の浄化責任者になっており、土壌環境保全法に違反している。
 韓米SOFA第7条(接収国法令尊重)は、『駐韓米軍の構成員は韓国の法令を尊重しなければならない』と規定する。
 韓米SOFA合意議事録(第3条第2項に関して)は、『韓国政府の関連環境法令及び基準を尊重する政策を確認する』と規定している。
 この韓米SOFA及び合意議事録によれば、米国は土壌環境保全法を尊重する義務があり、当然、返還米軍基地の浄化責任を負わねばならない。環境部が明らかにした韓米「共同環境影響評価手続き(JEAP,2009)」の主要な内容も、「返還予定の米軍基地は、環境調査及び危害性を評価して『合意された治癒方案はSOFA及び関連規定に従って施行され、米側が返還国である場合は米側の費用で米側が』浄化」するようになっている。
 ところが米国は返還米軍基地の浄化責任を韓国国民に押し付けており、韓米SOFAと韓米合意議事録に違反している。政府は米国に返還米軍基地の浄化責任を免除してやっており、国内環境法すなわち環境主権守護を放棄している。

 返還米軍基地12ヵ所の内、9ヵ所が基準値を大幅に超過
 環境部は、2020年12月に返還が決まった米軍基地12ヵ所(極東工兵団、西氷庫(ソビンゴ)情報隊など)に対して危害性を評価する調査を実施した。その結果が<ニュース打破>の情報公開請求によって公開されたが、9ヵ所で危害性があると調査された。(<ニュース打破>、2021,3)
 この9ヵ所の中でソウルのニブロベラックス(訳注:外人住宅敷地の名称)(2022年予算11憶ウォン)、ソウルのCampキム(73憶ウォン)、ソウルの極東工兵団(62憶ウォン)、大邱(テグ)のCampウォーカー(18憶ウォン)、成南(ソンナム)ゴルフ場(21憶ウォン)の5ヵ所は、2022年度の環境調査及び治癒事業対象に含まれている。これら5ヵ所はすべて危害度が基準値を大きく超過している。
 例えば、公共住宅予定地である龍山(ヨンサン)のCampキムの場合、住居地域の発癌危害度が2%だ。これは、環境部公示の「土壌汚染物質危害性評価指針」の基準値10-5~10-6を最低2,000倍ぐらい超えている。Campキムの敷地に建てられる住宅居住者の、100名中2名が癌にかかる確率があるという意味だ。大邱のCampウォーカーの場合は発癌危害度が住居地域基準値の22倍を超え、非発癌危害度も住居地域基準値の子どもが19倍、成人は17倍を超えている。

 環境部の危害性評価を全面否定する米国の態度・・・‘不法不当’
 外交当局者の話によれば、『韓国は環境部の主導の下で環境費用を推算しているが、これに対する私たちの技術・方式・基準などをして、米国側は同意しないでいる』としつつ、『米国側は(費用推算に)自分たちが参加せず、国内法とは異なる環境調査手法を使うことに対して、実質的に合っているのか危害度評価がされているのか問題を提起する』(<News1>、2021,7,29)という。
 米国は環境部の危害性評価自体を認定しないでいるのだ。しかし、果たして米国の態度は正当だろうか。そうではない。
 環境保護に関する特別了解覚書(韓米SOFA付属文書)によれば、『米国は駐韓米軍によって惹起される‘人間の健康に対する周知で窮迫した実質的な危険を招来する汚染’(KISE)の治癒を迅速に遂行』するようにしている。共同環境評価手続き(JEAP)は、米軍基地が返還される前に、その汚染程度がKISEに該当するのかを判断するため、韓国が危害性評価をするようになっている。環境部の危害性評価はまさにこのJEAPによるものであるので法的な根拠を有する。

 KISEを3~5年内の確実な発病水準の汚染とみる駐韓米軍、法的根拠は無い
 KISEに対して韓国は、「70年間で10万人あたり1人が癌にかかる確率を超過する汚染」とみる。
 反面で、駐韓米軍(米国)は、‘3~5年内の発病が確実な水準の汚染’とみる。では、駐韓米軍がKISEを3~5年内で発病が確実な水準の汚染と解釈することに法的な根拠があるのか。まったく無い。
 駐韓米軍が主張してきたKISEは、その概念が曖昧模糊として駐韓米軍司令官が恣意的に判断するようになっており、元来は環境保護に関する特別了解覚書やJEAPに入ってはならない概念だった。今後、KISEを削除して環境治癒基準は国内法に従うと改正されなければならない。
 KISEに対する駐韓米軍の主張(解釈)は、米国防総省の『海外米軍基地の環境汚染治癒』指示(4715.08)によるものだ。この指示は‘人間の健康と安全に対する実質的影響(substantial impact to human health and safety)’を’3~5年内に発病する水準の汚染露出‘と定義している。しかし、米国防総省の指示は、どこまでも内部指針に過ぎないのであり、何の国際法的拘束力も無く、これに韓国が従わなければならない義務は無い。
 更に、米国連邦環境法に規定されたKISEは駐韓米軍の主張とは異なる。米連邦環境法(資源保全と復旧法)によれば、『‘危険(endanger)’は実際に害を負ったり害を負う可能性があることを示す。‘窮迫な(imminent)’は数年の間にその害が認識されなかったとしても、環境や保険に今後影響を与えうる数値ならば緊急なことに該当する。‘実質的な(substantial)危険は、健康と環境に深刻な害を与える明らかな原因があるならば該当する。とてつもない危険(risk)である必要はない。』(パク・キハク、米国の駐韓米軍基地環境汚染治癒責任に対する法的視角、P19)米連邦環境法によれば、KISEに対する韓国側の解釈が妥当だという意味だ。
 一方、韓米SOFAの関連文書(合意議事録、環境保護に関する特別了解覚書、JEAP)を見ても、KISEを駐韓米軍が主張するように3~5年内に発病が確実な水準の汚染と定義する、どんな規定もない。米国は韓米SOFA及び韓米合意議事録に従って韓国の環境法を尊重しなければならず、国内の環境法に依拠した基準、すなわち、‘10万人あたり1人が70年の間で癌にかかる確率を超過する汚染’を環境治癒基準とする韓国の立場に従わなければならない。

 守勢的で敗北的な政府の態度が問題
 現行の韓米SOFAと環境条項、米国連邦環境法、米国防総省指示などを総合すれば、駐韓米軍が基地汚染に対する浄化責任を負うことが当たり前であり、更に、駐韓米軍がKISEを‘3~5年内に発病が確実な汚染水準’と主張しながら汚染浄化を回避することは、何の法的根拠を持ちえない無理強いであり横暴だ。
 それでも政府が、この様な駐韓米軍の無理強いの主張に押されて国内法的な根拠を有するKISEに関する自らの解釈を貫徹させることができないのは、根本的にみれば守勢的で敗北的な態度であるためだ。
 文在寅政権は2019年の国家安全保障会議(NSC)で、『この間の韓米協議の結果、現行SOFA体制の下では協議を通して環境問題に対する異見を解消することが事実上困難だと判断した』という。(<京郷新聞>、2019,9,28) これは文在寅政権が、韓米SOFA第4条1項(原状回復義務免除)を立てて環境汚染浄化責任にそっぽを向いてきた米国の主張を受け入れたということを意味する。‘SOFA第4条が環境浄化義務まで免除するのではなく、米国に合わせてきた’ (<聯合ニュース>、2020,12,11)との、政府の既存の立場を覆したものでもある。
 韓米SOFA合意議事録第3条(2項に関して)中、『韓国政府の関連環境法令及び基準を尊重する政策を確認する』という規定や、環境保護に関する特別了解覚書の『米国は駐韓米軍によって惹起される人間の健康に対する周知の窮迫した実質的な危険を招来する汚染の治癒を迅速に遂行しつつ』という規定、JEAPの『合議された環境治癒方案に対しては米国が費用と施行を担当する』という共同環境評価手続き規定などは、米国に汚染治癒費用を負担させることができる法的な根拠だ。
 これは、『ドイツ環境法を尊重して適用する』と規定しているNATO地位協定ドイツ補充協定と比較すれば法的拘束力は落ちるが、法的な拘束力を持っているということは明白だ。この様な法的拘束力は、韓米SOFA環境条項と共同環境評価手続きに従って駐韓米軍基地が返還されている事実から証明される。
 反面で、韓米間の異見が継続される場合、仲裁方案が皆無だという政府の主張も無茶苦茶だ。米国の汚染浄化責任に関する韓米間交渉を誰が仲裁するというのか。仲裁方案が無く、米国に浄化責任を問えないという話は、政府自身の無能を告白することに過ぎない。
 米国の浄化責任に関する韓米間交渉を左右するのは、結局は交渉力だ。これは法的な根拠、確固とした環境主権守護の意思、国民的支持に依存する。米国の責任を問う法的な根拠があっても、これを貫徹することに消極的で、また、先返還後浄化責任論議の様に、米国に浄化責任を正面から問うことを回避する態度を見せて、国民に徹底して米軍基地返還交渉を隠すのならば交渉力を生み出すことはできない。
 政府の守勢的で敗北的な姿勢は、先返還後交渉方式でも現れる。外交部は2019年12月、同じく2020年12月の韓米SOFA合同委員会で、各々4つの基地及び12ヵ所の基地を『汚染浄化責任に対する論議を持続するという条件で』返還されることにしたと明らかにしている。
 しかし、いったん返還を受け入れれば、JEAPに規定された環境協議手続き(米国との共同調査など)を省略するようになるなど、米国に浄化責任を問うことが更に難しくなる。いったん米国の立場で返還を終えるようになれば、基地を自らが管理する責任が無く、また韓国が自らの財政で治癒を行うため、環境汚染治癒責任を論議する交渉に積極的である理由が無くなるようになる。この点から、米軍基地が返還される前に環境協議を経るようにするJEAPの規定を守らない政府の振舞いは職務遺棄に該当する。
 政府の守勢的で敗北的な態度は、米軍基地返還交渉過程に対して、徹底して韓国国民に秘密にするところからも現れる。政府は韓米SOFA合同委員会の結果や返還される米軍基地に対する環境調査結果などに対しして、非公開で一貫している。環境調査の場合、裁判所が公開命令を下ろせば、その時やっと核心的な部分を除いて公開する。この様な非公開の態度は、米国のご機嫌伺いであるからだ。こんな対米低姿勢では私たちの環境主権を守ることはできない。
 いま、韓米間では龍山米軍基地返還交渉が進められている。これと関連して昨年の7月29日に韓米SOFA合同委員会が開かれた。ここでは“2022年当初まで約50万㎡規模の龍山基地返還を成し遂げることができるよう緊密に協力”(外交部報道資料、2021,7,29)することにした。また、12月2日に開かれた韓米年次安保協議会(SCM)でも『韓国の適切な保安フェンス設置後、2022年当初までに相当な規模の龍山基地の土地が返還されることを再確認』した。
 しかし、上記の2つの会議発表を見れば、龍山基地の浄化責任を米国に問うことに対してはどうするかの言及が無い。同じく、龍山基地に対する環境調査が進められているはずだが、それに対する政府の発表も無い。
 龍山基地はその汚染面積が他の米軍基地と比較することができないほど広く、それで浄化費用も数千億ウォンに達すると専門家たちは予想する。この費用を再び韓国国民が負担することはできない。
 そうであるならば、何よりも守勢的で敗北的な態度から政府が離れ、環境主権を守護しようという確固とした意志を持たなければならない。
 2022年の米軍基地環境汚染浄化事業予算の645憶ウォンは、コロナ禍と死闘を繰り広げる保健医療人力及び医療機関従事者の処遇を改善することができる予算約1700億の38%に該当する。政府はこれ以上私たち国民の税金が乱費されず、民正と福祉、コロナ禍で苦痛を受ける労働者と零細商工人に使うことができるよう、必ず米国に対して浄化責任を問わなければならない。
 このために政府は国内環境法、韓米SOFA第7条及び韓米合意議事録、環境保護に関する特別了解覚書などを根拠に、米国の汚染治癒責任を堂々と問うこと、また、米軍基地返還交渉及び環境調査結果を国民の前に公開することを求める。
 それと共に、環境主権に対する韓米SOFAの法的拘束力を高めることができるよう、言い換えれば、国内の環境法を米国が尊重するだけでなく遵守するという明白な規定を定め、KISEのような恣意的で曖昧模糊とした環境治癒基準は削除するよう韓米SOFAを改正しなければならないだろう。(平和と統一を開く人々spark946)■

原文の出典→ http://www.ohmynews.com/NWS_Web/View/at_pg.aspx?CNTN_CD=A0002800885&CMPT_CD=P0010&utm_source=naver&utm_medium=newsearch&utm_campaign=naver_news

topic-6
 言論協同組合【prssian】は、南北和解と平和統一のための市民たちの集まりである「平和統一市民行動」(代表:イ・ヂノ)の‘2021平和統一市民講座 退勤後の学校’を連載します。
 以下は、“反北報道の根っこ、韓米同盟と国家保安法”を主題として行われたコ・スンウ言論社会学博士による講義の主要な内容です。  【prssian】 2021,12,29

      国家保安法と韓米同盟、このままで良いのか
〔2021平和統一市民講座 退勤後の学校〕コ・スンウ言論社会学博士
    ファン・ナムスン 平和統一市民行動 事務局長 2021.12.29

 韓半島の非核化と南北交流協力が論議される過程で、国家保安法と韓米同盟は二つの巨大な障害物として機能しています。私たちは、思考の領域が韓米同盟と国家保安法によってとても狭められています。ところが、不幸にも何も不便ではなさそうです。
 特に、韓米同盟は政治圏、学界、言論で絶対に触れてはならない不可侵の領域です。韓米相互防衛条約によって、私たちは米国の軍事的植民地と表現できるほどに隷属されています。私たちは世界的に顔を上げられないほど恥ずかしい状態ですが、20代大統領選挙では韓米同盟と国家保安法問題が主要には扱われないでいます。

 北韓を敵対する国家保安法
 国家保安法は潜入・脱出、和合・通信、鼓舞・称賛の罪を問い、北韓に対する一切の接近を禁止します。国家保安法を制定した李承晩(イ・スンマン)は、韓民族の歴史で最も悪辣な行為を行ったのです。
 政治理念と思想は一時的です。悠久の歴史では多くの思想と理念が生まれては無くなりました。21世紀は資本主義と社会主義体制に分けられていますが、この体制が今後永遠に持続されるのではありません。
 李承晩は北韓の全市民を敵対視して、南韓社会で北韓を完全に孤立させました。事実として、民族を孤立させたのです。だから、民族史で最も凶悪な罪を犯したのが李承晩です。

 共存と認定、同伴者の概念を無くさせてしまった国家保安法
 国家保安法は南北を完璧に絶縁させて対立的な関係にしたので、南韓の住民らを害する力が大きいのです。南北関係は同伴者の概念が無く完全な敵対関係になりました。国家保安法によって、民族の半分であり統一の同伴者である北韓は、敵対の対象であったり恩恵の対象という見方だけが許されます。
 これは即、教育現場で共存と認定、同伴者的概念の‘競争’を失わせてしまいました。南韓社会で競争相手は共存の対象ではなく、必ず退けなければならない存在になりました。国家保安法によって思想と想像の自由が抑圧され、自由な対話と討論が不可能になりました。

 一日に一件の割合で国家保安法違反事件が発生
 1961年から2008年までに1万4000人余りが国家保安法違反で起訴されました。毎年298件余りが起訴され、ほとんど毎日一件の割合で国家保安法違反事件が発生したのです。
 2000年代に入って国家保安法違反での起訴が急激に減った事を考えてみれば、過去の李承晩、朴正煕(パク・チョンヒ)独裁政権に続いて、全斗煥(チョン・ドゥファン)、盧泰愚(ノ・テウ)、金泳三(キム・ヨンサム)政権まで、国家保安法事件が凄まじかったことが分かります。これらの政権は国家保安法政権です。文在寅(ムン・ヂェイン)政権も汎民連(祖国統一汎民族連合)の幹部を国家保安法違反で起訴しました。

 未来学と進歩を不可能にする国家保安法
 私たちは国家保安法のために未来学を行うことができません。未来学は国家単位で行います。経済、社会、文化全般が、未来にどの様にどんな方向に進んでいくのかを予測するのが未来学です。ところが、国家保安法は北韓が含まれた未来を描いてみる事を禁止しているため、南韓社会で未来学があり得ません。  
 また、国家保安法は初等教育~高等教育の教科書全般を検閲して、日常的な言論報道を統制します。すべての言論社の記者たちは、いつでも北韓の行動を底意ありげに報道して、北韓の言葉と行動を敵対的な概念で解釈する記事を書いています。私たち国民は日常的にその様な情報に接することで、北韓は必ず殲滅しなければならない対象として考えるようになります。
 近頃、MZ世代(訳注:「ミレニアル世代(Y世代とも呼ばれ、1980年代前半から1996年頃に生まれた世代。アナログ時代に生まれてデジタル時代への過渡期を経験した世代を意味する。)」とその後のZ世代(1997年頃から2010年頃までに生まれた世代。生まれた時からデジタル環境に接しながら育った世代。)を合わせて示す言葉。https://korimesi.com/media/mzsedae/ 参照)が統一無用論を口にする事はまったく異常な事ではありません。ともすれば当然です。生まれた時から国家保安法によって加工された情報のみに接しているので、統一に対して肯定的に考える事が異常なのです。
 進歩は思想と考えの表現、想像に滞りがあってはなりません。滞ることは保守と同じなのです。保守は既存の伝統、文化、法体系が、今までの社会が努力した最上の結果であるため遵守しなければならないとします。ところが、進歩はより良いことを絶え間なく悩みます。しかし、李承晩が国家保安法を作って進歩は生存することができる土壌を完全に剥奪されました。進歩は国家保安法によって不具になりました。
 国家保安法が適用されることがどれほど恐ろしいことなのかは、平昌(ピョンチャン)オリムピックでの‘金日成(キム・イルソン)の仮面’(訳注:平昌オリムピックの女子アイスホッケー統一チームの競技中、北韓の応援団が男性の顔の仮面を付けていた様子を、韓国の一部メディアが『金日成の仮面を付けて応援している』と報道した出来事 https://www.hani.co.kr/arti/politics/defense/831772.html 参照)を例に挙げることができます。‘金日成の仮面’に対して【法律放送】は、『それは利敵表現に該当して国家保安法の讃揚・鼓舞罪に該当し、現場でそれを見た人々とこれを中継した放送社の関係者ら、該当の映像を拡散した人々はすべて国家保安法第7条の讃揚・鼓舞罪違反者となる』と指摘しました。
 最高裁判所は国家保安法の適用を厳格に行わなければならないと判決しました。北韓と積極的に同調して北韓の政策を南韓に執行する意図が無ければ国家保安法を適用してはならないとしましたが、公安当局は‘金日成の仮面’さえも国家保安法を適用しようとしました。

 全国民を予備犯罪者にする国家保安法
 李承晩は北韓を壊滅させるために法律を作りましたが、南北が断絶された状態で国家保安法が北に対して直接危害を加えることはできません。
 我が国で唯一国家保安法が適用されない人物は大統領だけです。統治行為の次元で大統領の対北接触や交流協力の模索は容認されます。ところが、洪準杓(訳注:ホン・ヂュンピョ、保守野党「国民の力」重鎮)氏は、2018年の二回の南北首脳会談に対しても、後に国家保安法違反に関わるだろうと言いました。
 これは恐ろしい事です。国家保安法は私たちすべてを予備犯罪者にして、社会を侵しています。
 民主党(訳注:「共に民主党」与党)が180議席を占めていますが、民主党議員の50%以上が国家保安法廃止に反対です。21世紀で最悪の不平等条約である韓米相互防衛条約を温存させる最も確実な支えが国家保安法です。

 国の品格と自主権の尊重は韓米同盟の破棄から
 バイデン米国大統領が就任して民主主義と人権を強調しました。人権と民主主義の強調は、国と国の関係で相手国の品格と自主権を尊重することと拡大解釈することができます。そして、私たちが韓米相互防衛条約と韓米同盟の問題点を指摘することは、国際社会の人権と国権、民主主義を拡散させることです。世界平和と相互尊重を唱える米国も、韓米関係を新たにすることが得することです。

 駐韓米軍の駐屯権利(right)
 六つの条項で成っている韓米相互防衛条約は、その中でも四番目の条項(韓米相互防衛条約第4条:相互合意によって米合衆国の陸軍、海軍と空軍を大韓民国の領内とその付近に配置する権利を、大韓民国はこれを許与し、米合衆国はこれを受諾する。)が最も悪辣です。
 米国の軍事力を韓半島とその周辺に配置する権利(right)と規定しています。権利というのは相手の意思とは関係なく自分の意思を貫徹することです。米軍を韓国に駐屯させることが米国の権利となっています。
 韓米相互防衛条約第4条の付属協定が駐韓米軍地位協定(SOFA:正式名称「大韓民国と米合衆国の相互防衛条約第4条による施設と区域及び大韓民国での合衆国軍隊の地位に関する協定」)です。SOFAは駐韓米軍の基地と施設を韓国が提供する法です。
 これに依拠して、世界最大規模の平澤(ピョンテク)米軍基地も我が国が米軍に提供したのです。韓米相互防衛条約によるサード(訳注:THAAD(Theater High Altitude Area Defense missile)戦域高高度防衛ミサイル)も、米国が要求すれば韓国が受容するほかありません。
 朴槿恵(パク・クネ)政権時、韓米間でサード協議がなされて両国間で論争になったように見えましたが、サードの配置発表は国防部政策室長が行いました。サードという凄まじい兵器を配置するとの発表を、長官ではない政策室長が行ったのです。サードは韓米相互防衛条約によって米国が配置する権利を持っており、交渉の対象ではないためです。環境影響評価もまた、米軍が駐屯するのに快適で公害が無いということを韓国政府が保障してあげたのです。
 返還過程にある龍山(ヨンサン)米軍基地の環境汚染が相当深刻な問題ですが、米国は一文も責任を取る必要がありません。ソウル市が米軍基地汚染問題に対して訴訟を起こせば、政府が駐韓米軍を代行し、訴訟で中央政府が負けるようになれば、米軍の代わりに中央政府が強制的な負担を負うようになります。釜山の米軍基地に搬入される毒物もまた同じです。米軍の権利であるため好きなように運び込めるのです。我が政府に通報したり税関を通る必要がありません。
 韓米相互防衛条約第4条によって米軍の権利を保障しており、SOFAは韓米相互防衛条約の下位法であるので、SOFAだけ改正するのは不可能です。
 韓米防衛費分担特区別協定(SMA)も同じです。SOFAによれば、韓国は米軍基地と施設のみを提供するようになっていて、駐韓米軍の駐屯費は米国が負担するようになっています。ところが、韓米防衛費分担特別協定を結んで、2021年だけでも韓国政府に1兆ウォンぐらいを負担させています。
 韓米相互防衛条約は、改正をどの様に行うのか条約に明示されていません。第6条に、韓国と米国が廃棄を望めば、通報して1年後に本条約を終結することができるという条項だけがあります。

 日本の国連司令部後方基地を放棄することができない米国
 現在、国連軍は国連の旗を使っていますが、国連に所属した軍隊ではありません。1950年の国連安保理で米国にすべての権限を委任しました。国連旗の使用を許諾して、多国籍軍を構成できるようにしてあげました。与党の代表は国連司令部が幽霊団体だと言いますが、そうではありません。国連司令部は現在、平澤基地に100人余りが勤務していますが、核心は日本の国連司令部後方基地です。
 韓国戦争時、マッカーサー司令官が韓国に来る前に、日本に国連軍司令部を置いて後方基地も作りました。マッカーサーが国連軍司令部を韓半島に移しましたが、後方基地は日本に残しながら現在まで米軍がそこに駐屯しています。
 国連司令部後方基地は、駐日米軍89ヵ所の基地の中で、戦略的に重要な七つの基地の管轄権を行使しています。国連司令部は日本にある国連司令部後方基地を管掌しながら、韓半島有事の際に米国はいつでも後方基地を通して多国籍軍を募集し、すぐに韓半島に入ってくることができます。国連司令部の存立は、国連司令部後方基地維持の必須条件として米国が強く執着しています。
 現在、東南・北アジアの公海上でドイツ、イギリスなど外国の軍艦が、北韓の国連制裁違反の有無を監視しながら作戦を行っていますが、この軍艦の定着基地が日本にある後方基地です。国連司令部は幽霊団体ではなく厳然として実体があります。
 国連司令部が国連規定に反するという主張がありますが、これもまた正しい主張ではありません。国連司令部は法律的に国連と関係が無く、米国政府の傘下機構の様になっています。国連司令部は米国政府に報告して、米国政府が国連に報告します。
 1953年に停戦協定が調印された際、国連司令部にこの事実を伝達して同年8月の国連総会は同意する決議案を通過させました。国連総会で停戦協定が採択されたことは、国連司令部が停戦協定を管掌する役割を保障すると解釈されています。国連司令部は実体があり、米国は日本の後方基地を放棄しないでしょう。

 世界で占める韓国の位相に合う軍事主権が必要
 韓国の戦時作戦権を‘取り戻す’ことですが、米国がパワハラしています。駐韓米軍の駐屯は米国の韓国に対する恩恵的政策ではありません。米国は米大統領決定指針25号(PDD-25)に従って、海外での作戦参加時、平和より国益を優先し、国益が最優先でなければいつでも軍事同盟から離脱する可能性があります。
 米国は自国の軍隊を海外に派兵する時、正義や人道主義的な支援を考慮するのではなく、米国の国益を最優先に考慮するようになっています。米国はいつでもPDD-25を発動して、米国の国益に反すると判断すれば、米軍を撤収させることができます。軍事同盟を破棄することは国際法的に不法でもなく、処罰することもできません。
 韓国も同じです。軍統帥権者である大統領が判断する時、韓米相互防衛条約が韓国の利益に符合しないと判断されれば、韓国と米国は同盟を破るのです。国際法的にも容認されることです。軍隊は一度作戦を誤れば、すぐに死と連結されて原状回復が成りません。作戦統制権はとても重要です。
 日本と米国は、各々の軍隊に対してのみ権限を持って、合意した作戦に対してのみ協調することになっています。日本は陸上自衛隊が米軍司令部と平素緊密な協調関係を維持している体制で戦時にも同様です。
 ドイツの戦時作戦統制権はNATOの集団防衛体制と連関されています。ドイツ軍の中で野戦軍はNATOの指揮体制下に入り、残りの地域防衛軍は自主編成で動きます。NATO所属の部隊に対する実質的な戦時作戦統制権は、ヨーロッパ連合軍最高司令軍である米軍の将軍が執っています。しかし、ヨーロッパ連合軍の最高司令部にNATO軍事委員会を置き、米軍の一方的決定を牽制しつつ、軍事委員長は選出するため米国が独占することはできません。
 私たちの経済力は世界で10位圏、軍事力は世界6位ですが、私たちは米国と完全に一体になっています。東北アジアの一国家で、国連会員国であると共に韓半島平和の当事者ですが、存在感がありません。韓国戦争が終わって70年余りが過ぎましたが、韓国は米国の意思通りに動いてきました。

 米国の“Fight Tonight”
 米国は何気なく対北先制攻撃の話をして、私たち国民はそんな報道を何気なく見て過ごします。米国防総省や駐韓米軍は、すぐ今晩でも戦う準備になっているという“Fight Tonight”スローガンを叫びますが、いざとなると韓国の意思は問いません。
 米国は過去数十年間、核の先制攻撃を含めた作戦計画を状況に伴って修正してきました。作戦計画5026、5027、5028、5030、5015などがあります。
 駐韓米軍は北韓だけでなく中国を狙った性格も帯びています。駐韓米軍は中国の喉を狙った匕首です。
 群山(クンサン)飛行場は50年代から、滑走路に中国を狙って完全武装した戦闘機がいつも待機しています。今も同じです。米国の最先端宇宙軍部隊が韓国の群山空軍基地に入ってきており、中国とロシアもこれを注目しています。
 米国は、韓米同盟が韓半島を飛び越えて中国に向かっても作動しなければならないと主張しながら、QUAD+(訳注:QUAD(米国、日本、オーストラリア、インドの4ヵ国による外交、安全保障協力体制)に韓国やシンガポールを含める構想)加入を強調して、韓米同盟を調整しなければならないと主張しています。

 韓米相互防衛条約第4条によって可能な米国の対北先制攻撃権
 米国大統領は対北先制攻撃権を口にします。米国は憲法第2条を通して、外部の攻撃がひっ迫していて国家の安危が危ういと判断されれば、軍事力を発動して先制攻撃できる権限が付与されています。
 大統領の‘武力使用権限(AUMF)’は‘テロとの戦争’を明文にした米国の軍事行動を正当化して持続するための口実として活用されており、2016年までに14ヵ国や公海上で37件に介入しました。テロ支援国として指定されれば検討対象に含まれ、北韓もテロ支援国に指定されています。
 米国のどんな法にも、米国が他の国に対する先制攻撃権を発動する時、外国国家と協議するという規定はありません。従って、米国が対北先制攻撃を検討する時、韓国政府に通報したり事前協議する理由がありません。
 米議会は大統領の先制攻撃権行使に対して牽制を試みていますが、大統領の先制攻撃権を事前に阻止することは不可能だと見て、先制攻撃以後の予算執行に制動を掛けることができるシステムの導入を試みています。
 米大統領は議会を説得するため、先制攻撃の緊迫した必要性を事後に提示しなければなりません。まさにここで、韓米相互防衛条約第4条によって米国の軍事力が随時に韓半島に入ることが危険なことになります。
 韓半島に軍事的緊張がある時ごとに、米国の先端偵察機が韓半島に進入するということが何を意味するでしょうか。米国大統領が北韓に先制攻撃を行う時、北韓が米国を攻撃しようとする気配があったため不可避だったという証拠を収集するのです。
 韓米相互防衛条約第4条が無ければ、米国大統領が韓半島で先制攻撃を発動する根拠が無くなってしまいます。ところが、韓米相互防衛条約がある限り、米国がいつ北韓に先制攻撃権を発動するのか知ることができません。誤作動や誤判でも先制攻撃は行われることがあり、SLBMなどの先端兵器が動員された核攻撃になるでしょう。
 韓半島は、米国の核攻撃によって廃墟になるかも知れない確実な担保になっている国ですが、多くの人がこの問題を現実に感じたり問題意識を持てないでいます。
 韓米相互防衛条約が破棄されれば、米国の先制攻撃権が韓半島に発動されるには難しい状況になります。韓米相互防衛条約が破棄されれば、米国の軍事力が韓半島に入ってくることが権利ではなく必ず事前に韓国政府の承認を受けなければなりません。
 2011年、米国がパキスタンに隠れていたオサマ・ビンラディンを射殺しました。オバマの回顧談を見れば、この時最も難しかったのが、パキスタンが領空権侵害を理由に米国の特攻隊を狙撃する可能性でした。
 米国は、ビンラディンがパキスタンに潜伏しているという情報を入手して、誰にも知らせず秘密裏に特攻隊を送りました。ですから、パキスタン領空を侵犯したのです。
 まったく同じです。韓米相互防衛条約が廃棄され、それに伴って他の韓米間の航空関係協定が廃棄される場合、私たちの領空権は私たち固有の権限で、米国は私たちに事前に了解を求めなければなりません。領空権は排他的です。米国が現在の様に、自らの先端兵器を意のままに入れて偵察することができなくなります。すなわち、北韓が今戦争を開始するひっ迫した脅威であるという証拠を撮影できなくなります。
 米国と結んだ幾つかの条約の中で、破棄が一番容易な条約が韓米相互防衛条約です。韓米間第6条によって、破棄すると言えば法的に他の論争の道がありません。
 フィリピンの場合、米国との軍事同盟は主権国家として平等な協定です。米軍がフィリピンに駐屯する時はフィリピンの国内法の適用を受け、核兵器の搬入を禁止しながら恒久基地を許容しません。フィリピンの基地内に米軍が駐屯しなければならず、環境汚染に対しては米軍が責任を負うようになっています。
 米日間でも、米国が日本に軍事力を駐屯させることを私たちの様に‘権利’と保障していません。米日安全保障は『合衆国は陸軍、空軍及び海軍が日本国で施設及び区域を使用することが許容される』となっています。
 韓米同盟の破棄は韓米関係の断絶を意味するのではなく、米国が日本やフィリピンと結んだ軍事同盟資料などを持って再交渉することです。
 国際社会の慣行や規範に合うよう、同じ国連会員国として向き合い、東北アジアの恒久的平和と安定、幸福に寄与することができるよう合理的に作ってみようということです。
 勿論、韓米両国が合意すれば、韓米軍事同盟を白紙化することもできます。国際関係は合法的に結ばなければならない点で、韓米同盟の合理化は白紙状態から始めなければならず、これは国民の意思が非常に重要です。

 真正な独立国家、民主国家になるために
 韓米相互防衛条約の破棄は、韓国と米国が国際社会での位相と規範に合うように再調整しようというもので、肯定的で生産的です。特に、米国が南韓でスーパー級の特権を受けているため、対北交渉などでこの点が反映されることが米国の韓半島政策の特徴です。この様な特権が存在するため、北・米交渉が進展しないのではないかという点も考えてみなければなりません。
 今後、米国が合理的な韓半島及び東北アジア政策を推進するようにする第一歩が韓米同盟の正常化だと確信します。この様な点で韓米同盟の合理化は米国の対北、対東北アジア政策を合理化させるのに寄与するでしょう。
 米・中の覇権競争で東北アジア情勢が揺れ動いている状況で、韓国が軍事的自主権を行使する真正な独立国家の位相を有する時、南北平和統一、東北アジアの平和と安全が達成されるでしょう。
 国家保安法もまた、北韓を害する法ではなく南韓を害して未来を遮る法であるので廃棄しなくてはなりません。国家保安法は、主権者である国民が知的能力に於いて北韓と接して想像しただけでも問題が生じるということを前提にした後進的で悪辣な法です。主権者である国民が常に予備犯罪者へ転落するという悪法が、これ以上存在してはなりません。
 今日、資本主義と社会主義理念はその排他的な独自性を強調する代わりに、互いの長所を選択する混合経済に向かっています。この様な点を見極め、李承晩が親日派清算の動きをぶち壊すために作った国家保安法は必ず廃棄されなければなりません。21世紀の人工知能時代に国際競争力を持つためには、思想と表現の自由、韓半島全体を対象に未来を遮ることなく想像する自由が保障されなければなりません。■

原文 → https://www.pressian.com/pages/articles/2021122912034703783?utm_source=naver&utm_medium=search#0DKU

topic-5
‘釜山港、米軍細菌実験室閉鎖に賛成・反対、釜山市住民投票推進委員会’の【報道資料サイト】には面白い映像試料があります。
「米軍の嘘を自白」は、釜山の方言で語る「米軍の釜山での嘘」を告発する内容です。
 https://www.youtube.com/watch?v=4kMGRd_H3xY
「何故、駐韓米軍司令官を告発するか」は、若々しいイ・ヒョヌ弁護士が説得力をもって語っている内容です。
 https://www.youtube.com/watch?v=uhXicDVvt2w

米軍の細菌実験室、市民が審判・・・国際民間法廷を開催 【国際新聞】2021.12.7

 細菌戦など、米軍の戦争・反人倫犯罪に対する道徳的・歴史的審判を下す国際民間法廷が釜山で開かれた。陪審員団として参席した市民は、米軍に全員有罪の判決を下した。
 ‘釜山港、米軍細菌実験室閉鎖に賛成・反対、釜山市住民投票推進委員会’は7日の午後、民主公園小劇場で「米国の朝鮮戦争細菌戦と駐韓米軍細菌戦部隊運用」に対する国際民間法廷・釜山慶南市民裁判を開いた。民間法廷組織委員会は、国内外のNGO団体などで構成されている。
 この日の裁判では、ピョン・ヨンチョル弁護士ら「民主社会のための弁護士会」(民弁)釜山支部所属の弁護士4名が裁判長、イ・ヒョヌ弁護士ら民弁の弁護士4名が検事、ウ・ヒヂョン、ソウル大教授ら証人3名らが参席した。
 検事側は、ハリー・トルーマン、ドナルド・トランプ、ジョー・バイデンなどの前・現米国大統領とマシュー・リッジウェイ、ポール・ジョセフ・ラケモラ駐韓米軍司令官を被告人として起訴した。
 検事側は、「世界平和会議」と「国際民主法律家協会」などが作成した報告書を基づいて、米軍が6.25戦争(朝鮮戦争)時に細菌で汚染させた蚤などを散布したり、細菌爆弾を投下するなど多様な方法で細菌戦を敢行したと主張した。
 また、米軍が2016年にジュピタープログラムのための装備を導入し、釜山市に生物・化学兵器の試料サンプルは使用しないと明らかにした立場とは異なり、後に15回も試料を搬入するなど生化学兵器法を犯した嫌疑があるとした。
 生化学兵器法第25条1項によれば、生物兵器を移転・運送した者は無期懲役または5年以上に処するとなっている。米国はこの間、韓国に搬入された試料が不活性化されており、毒性が無いと主張している。
 検事を担った弁護士は、『毒素搬入行為は国際協約と国内法に違反した重罪であり、被告人らは嘘で犯罪を隠蔽して反省がなく、懲役30年を求刑する』と語った。陪審員団30人は無記名投票を通して全員有罪の判決を下した。量刑は多数(22人)が同意した懲役30年に決定した。
 ‘釜山港、米軍細菌実験室閉鎖に賛成・反対、釜山市住民投票推進委員会’のチョン・ウィボン状況室長は、『市民社会が米軍の細菌実験を検察に告発し、実験室閉鎖住民投票のための行政訴訟を行った。捜査は進捗が無く、行政訴訟は、米軍の供与地であり住民投票の対象にはならないという理由で棄却された。住民が何の責任を問うこともできなくなったので、道徳的な責任を問うことができるという点で意義のある裁判』だと語った。(キム・ミンヂョン記者)■


原文の出典 → http://www.kookje.co.kr/news2011/asp/newsbody.asp?code=0300&key=20211207.99099002200


裁判の生中継 → https://www.youtube.com/watch?v=u91thV7OQnc

topic-4
駐韓米軍の細菌戦部隊、釜山慶南市民裁判 記者会見の様子です。

「米国の戦争-反人倫犯罪国際民間法廷組織委員会」は11月2日、米大使館前で記者会見をもち、12.7釜山慶南市民裁判被告人らの出席要求書を伝達した。出典(統一ニュース:写真提供 チョン・ヨンヂン)

‘駐韓米軍の細菌兵器施設運営’を市民が審判する 【統一ニュース】2021,11,26
国際民間法廷、‘米軍細菌戦’12.7釜山慶南市民裁判を開催

 “米国の朝鮮戦争細菌戦と駐韓米軍細菌戦部隊運用に対する犯罪事実に対して、道徳的、歴史的に審判して断罪する国際民間法廷、釜山慶南市民裁判が開催される。”
 李長熙(イ・ヂャンヒ)国際民間法廷裁判長は23日の午前11時、ソウルの米国大使館前で行われた「2021/2022 米国の戦争、反人倫犯罪国際民間法廷釜山慶南市民裁判出席要求書伝達記者会見」で、『今回の釜山民間法廷は、純粋な市民の力による住民投票の実施と、民間法廷裁判を通した炭疽菌の真実究明と、この事を国民に大衆化するのに大きな意味がある』と明らかにした。
 李長熙裁判長は、『米軍の細菌戦、炭疽菌の密搬入を根本的に遮断する、不平等な韓米SOFA協定の改正が速やかに成し遂げられなければならない』として、『まず、国会は米軍基地の細菌戦、炭疽菌の真相究明のための国政監査に向けた国会特別委員会を構成せよ』と求めた。
 合わせて、『この間の細菌実験問題の真相を住民らに知らせてきた、釜山地域の市民団体が賛同する釜山市民法廷に期待が大きい』と付け加えた。
 コウン・グァンスン平和オモニ会常任代表が朗読した「出席要求書」には、『米国は朝鮮戦争当時、朝鮮半島一帯に細菌で汚染させた蚤などを散布したり細菌爆弾を投下するなど、多様な方法で細菌戦を敢行』したとして、以後にも駐韓米軍の細菌戦関連の幾つかの不法行為が行われていると例示した後、『全国民は米軍の細菌戦部隊による危険性に常時晒されているようになった』と批判した。
 「出席要求書」は、元・前・現職米国大統領と駐韓米軍司令官らを出席対象者として明記し、出席の日時と場所を12月7日の午後4時、釜山民主公園小劇場だと明らかにした。
 「被告人及び起訴内容」には、すでに死亡したハリー・トルーマン(Harry S.Truman)元・大統領の場合、朝鮮戦争に病原菌を搭載した爆弾を投下するなど、細菌戦で多くの人々を殺傷した罪を問い、「陸戦法規と慣習に関するハーグ協約(1907年)、ジュネーブ議定書で再確認した細菌戦禁止条項(1925年)」違反で起訴すると明らかにした。
 ポール・ジョセフ・ラケモラ(Paul Joseph LaCamera)現・駐韓米軍司令官の場合、『不法に設置、運用されている韓国内の細菌兵器施設』を継続して運営しており、バイデン大統領の指示に従って関連施設を拡大している罪を問い、「生物兵器禁止協約(BWC)、国内感染病予防法、SOFA協定合意議事録、大韓民国憲法上生命権、幸福追求権、人間尊厳性」に違反したと明記した。
 記者会見を終え、被告人たちの出席要求書を伝達するために米国大使館に集まって行こうとしたところ、警察に遮られて一時はもめ事も発生した。
 一方、「釜山港、米軍細菌実験室閉鎖に賛成・反対、釜山市住民投票推進委員会」などの地域団体は、細菌兵器の実験運営疑惑を受けている釜山第8埠頭の米軍基地前で同様の内容でこの日記者会見を行った。(キム・チグァン記者)■

原文の出典 → http://www.tongilnews.com/news/articleView.html?idxno=203744

出席要求書(全文)
国際民間法廷、釜山慶南市民裁判  裁判出席要求書

 米国は朝鮮戦争当時、朝鮮半島一帯に細菌で汚染させた蚤などを散布したり最近爆弾を投下するなど、多様な方法で細菌戦を敢行し、朝鮮戦争以後にも生物兵器開発を継続して、1960年代の末には炭疽菌、ボツリヌス菌毒素、野兎病原菌、Q列病原菌、ベネズエラ脳炎ウイルス、ブルセラ菌、葡萄狀球菌腸内毒素Bなどを兵器化することで、世界で生物兵器をもっとも多く保有した国になり、現在に至るまで歴代の米国政府は、細菌兵器の研究及び開発事業を国家の主要安保戦略事業に格上げしながら予算と人力を注いできた。
 2015年、生きている炭疽菌配送事態の当時、米軍は国際法で厳格に禁止された炭疽菌などの毒性物質を駐韓米軍基地に堂々と搬入したことが判明し、以後明らかになったように最低15回以上搬入した事実が明らかになった。
 同じく米軍はこの事件直後の2016年、釜山港第8埠頭にジュピタープロジェクトの一環として米軍の細菌施設を導入した。この後、ボツリヌス菌、リシン、葡萄狀球菌腸毒素などの生物作用剤をこの施設を始めとして全国4カ所に2017年から数回搬入した事実が明らかになり、国会の国政監査でも問題視された。
 2020年5月、米軍と米軍需産業は、韓半島全国各地の駐韓米軍基地で各種の細菌実験任務を遂行する人力を募集する広告を、堂々とインターネット上に公告した。募集公告には細菌戦の人力配置が釜山と昌原鎮海区だけでなく、大邱、倭館、ソウル、東豆川などに拡大されており、これは駐韓米軍全体が細菌戦の能力を有した細菌戦部隊化された事を意味する。これによって、全国民は米軍の細菌戦部隊による危険性に常時晒されているようになった。
 米国と駐韓米軍のこの様な振る舞いは<生物兵器協約>で厳格に禁止した毒素に対する生産、輸送、備蓄を強行したものであり、輸入運送許可保有申告などの手続きを無視した行為であり、<検疫予防法>などの国内法に違反したものだ。
 このような米国の朝鮮戦争細菌戦と駐韓米軍細菌部隊の運営に対する犯罪事実に対して、道徳的、歴史的に審判して断罪する国際民間法廷市民裁判が開催される。
 指定された出席対象者は民間裁判に出席し、犯した犯罪行為に対する処罰を受けることを要求しつつ、出席対象と日時及び場所は以下である。

〇出席対象者
ハリー・トルーマン(Harry S. Truman) 元・米国大統領
マシュー・リッジウェイ(Matthew Bunker Ridgway) 元・連合軍司令官
バラク・オバマ(Barack Hussein Obama) 元・米国大統領
ドナルド・トランプ(Donald John Trump) 前・米国大統領
ジョゼフ・バイデン(Joseph Robinette Biden Jr) 現・米国大統領
ポール・ジョセフ・ラケモラ(Paul Joseph LaCamera)現・駐韓米軍司令官

〇出席日時と場所

12月7日午後4時、釜山民主公園小劇場

2021.11.23
釜山港、米軍細菌実験室閉鎖に賛成・反対、釜山市住民投票推進委員会
鎮海、米軍細菌部隊追放慶南運動本部
2021/2022 米国の戦争、反人倫犯罪国際民間法廷組織委員会

topic-3
日米地位協定についてのアンケート、各政党からの回答です。なお、自民党と公明党からの回答はありませんでした。

日米地位協定についてのアンケートです。

topic-2 2021年 9月29日
防衛大臣   岸 信夫 殿
沖縄防衛局長 小野功雄 殿
有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会
共同代表:伊波義安・桜井国俊・玉那覇淑子・町田直美

普天間米軍PFAS汚染水の下水道放流及び日本側費用負担による汚水処理について

                (抗議・申入れ)

 8月26日、午前9時半、米海兵隊普天間基地は、基地内に溜まっていた有毒な有機フッ素化合物(PFAS)を含む汚染水を、宜野湾市の公共下水道に放流を開始し、総量6万4千リットルをその日のうちに全て放出した。(地元紙、8月28日報道)
 在沖米海兵隊は26日のプレスリリースにおいて、「海兵隊普天間航空基地のPFAS排出物処理システム(PETS)で処理した水を公共排水処理システムに放流し始めた。PETSは、水中のPFAS汚染をほぼ完全に除去することができ(中略)、PFOSとPFOAの合計が2.7 ng/L以下であることが確認されて」いるから、公共下水道に排出することは、「JEGS(日本環境管理基準)にも準拠している」と公表した。しかし27日、米軍(米海兵隊太平洋基地政務外交部長ニール・オーウェンズ大佐)が、沖縄県に「(JEGSには)排水に対する基準は設定されていない」との認識を示したように、この公表は米軍が、日米間で協議中の汚染水の取り扱いについて、26日に開催される日米合同委員会の議題に挙がっていたにもかかわらず、合意のないままに独断で故意に放流したことを、取り繕う方便以外の何ものでもない。
 宜野湾市は放流を知った当日11時過ぎに、普天間基地から公共下水道へ排出される下水道桝から下水を採水し、水質調査を行った。その結果、普天間基地から排出された下水に含まれるPFOSとPFOAの合計が670ng/Lであった。米軍の公表通り、PETSで処理した2.7 ng/L以下の水を放出したことが事実であれば、普天間基地内に他の深刻な汚染源が存在することを示す結果である。
 普天間基地ではこれまで泡消火剤訓練を繰り返してきたことから、基地内外の各所でPFASによる土壌汚染が蓄積され、地下水脈を伝って周辺住民の暮らしと隣り合わせの湧水にも深刻な汚染が広がっている。昨年4月にも普天間基地は、住宅街や排水路、河川、港湾等に汚染が拡がる事故を起こしたが、今回は、故意に汚染水を流出させたという点では、次元の異なる悪質違法な環境犯罪だ。
 7月13日に、米軍が国と地元自治体を普天間基地に入れて汚染水処理を話し合った時は、7万6千~17万㍑の地下貯水槽6つに汚染水が残り、貯水袋1つに処理後の水があると説明していたが、汚染水の総量について海兵隊は「把握していない」としていた。今回放流した6万4千㍑および、基地内に残る汚染水について、米軍が全容を明らかにしないまま、これらを日本側が引き取り処分する、処理費用9,200万円を全額負担すると合意・発表したことは、決して容認することはできない。
  汚染を引き起こした米軍に処理・浄化、費用負担の責任があること、汚染源を解明するために基地内立ち入り調査が不可欠であることを確認し、以下の事項につき強く求めるものである。

                     記
1.PFASを含む汚染水を、故意に公共下水道に放出した米軍の環境犯罪に対し、謝罪を求めること
2.普天間の深刻なPFAS汚染は、人間の健康に対する公知の差し迫った実質的脅威(環境原則に関する共
  同発表、2000年)であり、汚染源を解明するために立入り調査を迅速に実施すること
3.普天間基地由来のPFAS汚染水の無毒化の処理及び費用は、すべて米軍に負担させること

     (連絡先事務局)有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会
         住 所:〒901-2216 沖縄県宜野湾市字佐真下104
         氏 名:高橋年男 電 話:090-1088-3007

topic-1
米軍廃棄物に抗議した女性を家宅捜索 抗議と不起訴求める署名募る
2021年9月4日 15:00 沖縄タイムス   有料会員限定記事
https://www.okinawatimes.co.jp/articles/-/825492

宮城さんは昆虫研究家で、「米軍北部訓練場返還跡地に今なお残る廃棄物を、放置せず、持ち主である米軍に回収を求めて」ゲート前に空き缶や鉄くずを置いただけで、家宅捜索を受けました。
あからさまな恫喝に抗議するネット署名がふたつ集められています。

【宮城秋乃さんの不当な威力業務妨害での家宅捜索に強く抗議します。】
https://chng.it/qbsJMHn7

【宮城秋乃さんの威力業務妨害での家宅捜索は不当なものであり、起訴の無いように求めます】
https://chng.it/bQx7ycSP